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図3:経営トップの出身大学ランキング

併せて経営トップの経歴を開示している企業についても調べ、全上場会社トップの出身校のランキングと比較したものが図3だ。一番の特徴は設立3年以内の企業のランキング5位に外国の大学が入っていること。内藤氏は「MBA(経営学修士)などを外国の大学で取得した人たちが、自分たちの持っている人的ネットワークを活用しながら起業しているのでしょう」と見ている。

また、設立3年以内の企業だけに名前を連ねている大学に、近畿、専修、神奈川、京都産業、帝京、東洋など中堅クラスの私立大学が目立っている。もしかして、昨今の就職難で初めから起業を目指すベンチャー精神溢れる卒業生が多かったのかもしれない。

ネット集客を活かす新卒紹介事業

では、数々の荒波をかい潜って成長を遂げているベンチャー企業は、一体どうやって儲けているのだろう。ビジネス誌「CEO社長情報」の編集長を務め、数多くのベンチャー企業の栄枯盛衰を目にしてきた松室哲生氏は次のように語る。

「液晶に集中して失敗したシャープを反面教師にしているのか、最近の特徴の一つとして、自社の強みを活かしながら異業種で複数の“スモールビジネス”を展開する戦略をとるケースが増えています。その代表が、クライアント企業のサイトを検索結果の上位に表示させる成果報酬型のSEO事業で最大手のDYMです。同社の水谷佑毅社長は『売り上げが3億~5億円の事業なら成功する自信がある。50億円の事業を一つつくるよりも、5億円の事業を10つくるほうが簡単だ』といい、新卒紹介業で成功しています」

現在32歳の水谷社長は杏林大学医学部を卒業し、医師免許を持つ異色のベンチャー経営者。学費を稼ぐためにウェブビジネスを始め、大学1年生で3000万円の収入を得て、3年生のときには有限会社DYMを設立した。そして、日本の医療現場の立ち遅れたIT化に気づき、その現状を打開すべく医師としての道には進まず、経営者の道を突き進むことを選択する。そして、今年度は前年度比86.4%増の33億円の売上高を見込むまでに同社を成長させている。

その水谷社長が2年前に発案してスタートさせた事業が、SEOとは一見関係がなさそうな新卒紹介だった。しかし、この事業での売上高は今年度4億円弱、来年度7億円を見込み、すでに業界二番手のポジションにつけている。その強みは、SEO事業で培ったネットを介して人を集めるノウハウを持っていること。

「フェイスブックで3万7000人、ツイッターでは7万人の就活学生にリーチすることができます」と事業責任者である沖之城雅弘執行役員はいう。

新卒紹介事業のクライアントは400社ほどあり、そのうち約6割を人材確保に悩むIT企業やベンチャー企業が占める。そこで同社では集めた就活学生のなかから、コンサルタントが面談や登録シートの情報をもとに最も適した学生を選び、本人の希望を確認したうえで各社とのマッチングを行う。すると“相思相愛”になる確率が高く、就職後の定着率も高まることから、口コミでクライアントが増える好循環が生まれているのだ。

水谷社長は毎年3~4つの新規事業の立ち上げを考えている。もちろんネットでの集客という自社の強みを活かせる分野の事業で、昨年11月には産業医チームを企業に紹介するサイトをスタートさせた。きっと「IT×医療」の事業で医者100人分、1000人分の社会貢献をしていくという水谷社長自らの夢の実現に向けた事業の一つに位置付けられているのだろう。