櫻井パパは旧郵政出身でエース中のエース

大本命の「櫻井パパ」は、なぜ落選したか。いま総務省内はその話で持ち切りだ。

総務省の櫻井俊氏は(77年旧郵政省入省)は人気アイドルグループ「嵐」の櫻井翔の父親。省内で「櫻井パパ」と呼ばれる人気者の櫻井俊氏は、事務方トップの次官に次ぐナンバー2の総務審議官を務める実力者。東大法学部卒で入省当時から「将来の次官候補」と呼ばれていた逸材であり、この夏の人事では、次官就任が確実視されていた。

ところが実際に次官ポストを手に入れたのは、下馬評にものぼらなかった大石利雄消防庁長官(76年旧自治省入省)。

総務省は旧自治省、旧郵政省、旧総務庁からなり、三省庁のたすき掛け人事が行われてきたが、旧省庁間の力関係から、従来は旧自治省と旧郵政省がほぼ交代で次官を出してきた。

このこともあって、今夏の人事では、旧自治省出身の岡崎浩巳次官から「旧郵政出身でエース中のエース」(旧郵政OB)の櫻井氏へのバトンタッチが確実視されていたのだ。

総務省職員が語る。

「省内はびっくり仰天でしたよ。何しろ大石氏はすでに昨年6月の次官レースで、同期入省のライバル岡崎氏(76年旧自治省入省)に敗北を喫し、総務省から“一丁上がりポスト”の消防庁長官に転身していたからです。省内では“大石氏は終わった人”と見られていたから、今回の次官人事では名前すら出ていませんでした」

関係者の話を総合すると、この大どんでん返しのキーマンは安倍首相側近の菅義偉官房長官だった。

今夏の中央省庁幹部人事の特徴は、官邸主導強化を目的に新設された「内閣人事局」(初代局長=加藤勝信官房副長官)が人事を一元管理したこと。人事は、審議官級以上の約600人を対象に、内閣人事局が用意した資料などをもとに菅官房長官が幹部候補者の名簿を作成。その後、任命権を持つ閣僚が首相や官房長官と協議して決めるかたちだ。

「仕組みからして菅官房長官が大きな力を振るえる。菅氏は櫻井パパを外して、大石氏を次官に据えるべく政界と霞が関を説き伏せにかかった」(自民党関係者)