「介護」の値段をもう一度試算せよ
これから高齢者層として増えるのは団塊の世代である。高度経済成長期を体験してきている彼らは、豊かな日本を知るだけに目も肥えており、多様なライフスタイルを持っている。プライバシー意識も強く、ある意味「わがままなお年寄り」といえる。09年に学研が行った約3500人から集計した「終の住処に関する意識調査」では、年老いてから住まいに望むことの第1位に「住み慣れた地域に住み続けたい」が挙がった。次いで第2位に「医療・介護・経済面の安心」、第3位に「プライバシーへの配慮」、つまり多くの人はハード面での豪華さよりも、ソフト面での安心感を求めているのだ。
小早川氏は、介護市場に民間が参入し、様々なタイプのサービスを提供することで、国の限られた財源を節約することもできると指摘している。現状では本来必要でないサービスに対しても介護保険料がかかっているケースもあるというのだ。
「たとえば要介護度2の田中さんという人がいたとします。学研ココファンの高専賃の場合、介護保険料分として請求するのは平均で約11万9500円です(本人負担は1割の1万1950円)。それが、有料老人ホームの場合は19万2300円、特養の場合は22万2000円、老人保健施設は25万円、療養型病床群なら28万円と、同じ田中さんでも3万円ずつ高くなっていきます。これらの金額の1割は本人負担ですが、残りは国民の保険料や国庫の財源から出ています。
結局、入所系は有料老人ホームに限らず、包括報酬なので『要介護度2の人が入ったら、いくら介護保険が支給される』ということがあらかじめ決まっているのです。特に中介護度までは個人に応じてもっと介護内容をカスタマイズするよう国が政策指導していけば、いまの少ない財源の中でもやりくりできるはず」
これまでの老後プランでは、安価な特養は入居に時間がかかりすぎ、有料老人ホームは数千万円の入居金や月々の高額な支払いが必要であった。しかし、訪問介護サービス、高専賃市場の伸張によって、安価で安心な第3の道がひらけつつある。本人、家族単位での介護費用の見直しはもちろんのこと、国単位で介護のコストを試算しなおす時期だろう。
※すべて雑誌掲載当時