一難去って、また一難
一睡もできない夜は3日続いた。地獄の正月であった。その後、痛みはほんの少しだけ弱まった。「ドリル」の目盛りひとつ分、回転数が減ったようなもので、症状は変わらない。
松の内が過ぎ、町内にある整形外科に電話で開院を確認、苦痛に顔をゆがめながらも自転車をこいで行く。
白髪の老医師はわが右足を一瞥して、
「これはオレの担当じゃないけど」
いったい何を言い出すのだ、と不服そうな私に、
「一応、レントゲンは撮っておくか」
その画像を見て、
「やはり。痛風だ。内科へ行きなさい」
「え? 痛風ってのは親指に出るものじゃないんですか」
「そうとは限らないさ」
私はタクシーで総合病院の内科へ直行し、血液検査の後、クスリをもらったのである。
そのクスリは、青い色いわゆるシアンブルーをしている。処方箋には、コルヒチンとあった。
昼食後に1錠(0.5mg)、夕食後に1錠、服用したが、痛みがやむことはなく、相変わらず、休みなく「ドリル」が回っている。とはいえ、さらに目盛り1つか2つ分、軽減されたように思えた。久しぶりに、睡眠をとることができたから。
朝食後、1錠のんで、昼食前、急に腹痛に襲われ、トイレに急行。瀉(しゃ)する、という表現そのままに、勢いよく水のような便が出て、これが唐辛子のような刺激をもっていて、ひりひりと痛い。
「今度は下痢か」
ぶつくさと不平を言いつつ、気づいたらフツウに歩いている。
「ウソだろ」
雲散霧消、足首の痛みは跡かたもなく去っていたのであった。ところが、一難去ってまた一難。数分おきに下痢の衝動に駆られ、今度は「雪隠詰め」となったのである。
(佐久間奏=イラストレーション)