目指せ医学部! だけど、一口でお医者さんといっても診療科によって事情もさまざま。どんな仕事なのか、どんな子に向いているのか。

小児科医――お母さんとのコミュニケーション能力が大事

小児科医のデータ 
出典:厚生労働省「平成22年医師・歯科医師・薬剤師調査」(開業率は、各診療科全体における診療所勤務者の割合とした)、厚生労働省「医療経済実態調査」

小児科は、赤ちゃんのときから多かれ少なかれ付き合ってきた、子供にもなじみの深い診療科だ。赤ちゃんから学童まで、体の部位を問わず子供の治療を専門とする。

小児科医は全国に約1万6千人いる。これは診療科別に大きくくくると日本で3番目に多い医者となる。一時、小児科医不足で小児の夜間救急をやめたり、小児科を閉鎖したりする病院が相次いだが、実は、近年、小児科医の数自体は増えている。

「子供好きの人に向いているのはもちろんですが、小児科は患者である子供の親に対して丁寧な説明が求められる科です。そういう意味では、外科や内科以上にコミュニケーション能力が求められます。特に重要なのが、お母さんの話を聞く力ですね」

そう話すのは、ニューハンプシャーMC医師専任シニアコンサルタントの中村正志氏。

親になったばかりのときは誰でも不安だ。

赤ちゃんが何で泣いているのかわからず不安になったり、高熱が出たら怖い病気ではないかと心配になったりした経験のある人は多いのではないか。そんなときに支えとなるのも小児科医。

核家族化が進み1人で子育てしなければならない人が増えているだけに、小児科医は、どんなときに病院へ行ったほうがいいのかなど、子供への接し方も含めて母親教育をする指南役でもある。育児不安を抱える親をサポートしつつ、虐待にいち早く気づいて対処するのも小児科医の役割だ。

病院で新生児を担当する小児科医は産婦人科医と連携しながら、赤ちゃんがおなかの中にいるときから先天性の病気の治療にあたることもある。先天性の病気や小児がんの手術をする小児外科は、大人の外科とは別モノで小児科医の選択肢の1つである。

小さいときに病気を治してくれたお医者さんに憧れて医学部を目指すという子も多い。親子で頼りにしてきた小児科医が身近にいる場合には、その人が、わが子の理想の小児科医像になるかもしれない。