白紙の予定欄が未来の成果を生む

<strong>木谷朋之</strong>●1980年、群馬県生まれ。長岡技術大学卒、同大学院修了。2004年セコム入社後、開発センターに配属。09年4月にIS研究所に異動。現在は自社製品の使いやすさ向上の研究・調査に携わっている。
木谷朋之●1980年、群馬県生まれ。長岡技術大学卒、同大学院修了。2004年セコム入社後、開発センターに配属。09年4月にIS研究所に異動。現在は自社製品の使いやすさ向上の研究・調査に携わっている。

「手帳の空白を増やすことが目下の目標なんです」と語るのはセコムの研究職・木谷朋之さん。あえてスケジュールを詰めすぎないことで、「じっくりと考える時間」を生み出したいからだという。

愛用の「『超』整理手帳」は、ジャバラ式の予定表を広げれば最大8週間分のスケジュールが一覧できるユニークなもの。「就職活動のときに使い始めて以来ずっとこれ。スケジュール管理がしやすいんです。昔は夏休みの宿題を8月31日に慌ててやるタイプだったのに、この手帳を使い出してからは締め切りのある仕事も何とかこなせています」と笑う。

2009年4月に異動になるまでは、開発部門でタイトなスケジュールの仕事に追われていた。製品開発の合間にアフターサービスとして顧客先に出向くことも多く、締め切りや出張の予定で手帳は常に埋まっている状態。多忙ではあったが、顧客の生の声に触れる機会が多かっただけに、いつしか「この声を生かした製品がつくれないか」と思うようになった。

そんな折、「10年先の未来に向けたセキュリティサービスを考える」がモットーの研究所に異動。今は過去の経験を生かして、ユーザビリティに優れたセキュリティ製品の考案に頭を絞る毎日を送っている。

仕事の変化はスケジュール管理にも変化をもたらした。冒頭の「手帳の空白を増やす」は、「超」整理手帳の考案者である経済学者・野口悠紀雄氏の言葉だ。

「超」整理手帳は、もともとは正統派の縦長ケースのまま使用していたが(写真中央)、現在はコクヨ製のA5カバーに合わせて折って使う(右)。A7判のノートもカバーつきで携帯(左)。

「超」整理手帳は、もともとは正統派の縦長ケースのまま使用していたが(写真中央)、現在はコクヨ製のA5カバーに合わせて折って使う(右)。A7判のノートもカバーつきで携帯(左)。

「現在は製品の使いやすさに関する調査・研究に取り組んでおり、それに関連して、これまで専門的に学んだことのなかったユニバーサルデザインや試作モデルの成型方法についても知らなくてはなりません。緊急ではないけれど重要なこれらの知識を吸収するために、手帳が空白の日を利用して、勉強時間をあらかじめ確保するようにしています」

「超」整理手帳とともに、この新たな仕事を支えるツールが2冊のノートである。アイデアメモとして使っているA7判のノートはワイシャツのポケットに入れて常時携帯し、思いついたことは何でも書き留めている。アイデアをブラッシュアップさせる役割を果たすのが、普段は「超」整理手帳とともにホルダーに差し込んでいるA5判のノートだ。切り取ったアイデアメモや参考資料などをそのまま貼ったり、マインドマップで発想を広げたりと、自由気ままに使う。

「ノートを見返していると、何度も同じことを書いているようで、実は書くたびに内容がブラッシュアップされていることがわかります。だからアイデアは出し惜しみせずに何でも書き出せばいいんだと思うようになりました。以前、ブレーンストーミングで『よく次々と思いつくね』と言われたことがありますが、それも普段からノートを使ってアイデアを出す訓練をしているからかもしれません」

一見バラバラに見える出来事を結びつけて新たな発想につなげること、その発想を製品アイデアに昇華させるために考える時間を確保すること。手帳とノートがそのことに大きく貢献している。