100人いれば100通りの対応が必要になる

相手がどのような気持ちにあるか、どのような行動、言葉を自分に望んでいるかをつかむ感性、これは第1回でお話ししたように、シュルツさんが大事にしている“Caring”、すなわち相手への温かな関心、純粋に相手のために物事を考え、相手につくす「思いやりの心」によって育まれ、磨かれていくものだと思います。

そのためにはよいお手本が必要です。良書にふれ、主人公の心情によりそって、感情移入しながら読み進めることで自分以外の人の心を読み取ろうとする感性が育っていくのと同じように、ロールモデルとなる先輩のサービスをお手本として、行動を見習い、自分に取り入れながら実践を重ねていくことで、お客様の言葉にしないニーズを読み取り、望むサービスを提供したいという気持ちが育まれ、そしてお客様満足へと近づいていくのではないでしょうか。

お客様の心に何があるのか、どのようなサービスを望んでいるのか、100人いれば100通りの対応が求められます。難しい判断を迫られる場合もあるでしょう。しかしそれに応えることができれば、「ほかでは叶わないことが、ここでなら叶う」とお客様に認識され、それが付加価値となり、他との差別化につながっていくのです。

シュルツさんのホテルではオリエンテーションや朝礼などを通して、お客様に評価されたサービスの実例を情報共有し、意見交換し、またスタッフがホテルにお客様として泊まり、サービスを実際に体験し、得たことをもとに、さらなるサービスの向上をはかります。こうしたことの繰り返しによって、お客様のあらゆる要望にも柔軟に対応する力がつき、お客様の本当に望むサービスに限りなく近づいていくのです。