危険な暑さが続いている。7月29日には栃木県佐野市で41.0度の気温が観測された。日本史上最も高い気温は2018年に埼玉県熊谷市と20年に静岡県浜松市で観測された41.1度だというから、歴代最高レベルの猛暑であることは間違いない。読者の皆様にはくれぐれも、水分と塩分をよく摂って熱中症に気を付けてほしいと思う。
それにしても、日本の夏は本当に過ごしにくい。私は首相の外遊に同行したり、現地の知人との会合などでアフリカ諸国へ行く機会も多いのだが、日本に帰国すると「アフリカは日本よりも暑くて大変だったでしょう」「蚊に刺されませんでしたか」とよく言われる。しかし、「アフリカ=どこでも暑い」というのは間違いで、日本より涼しく、過ごしやすい国も多い。
たとえば、ケニアの首都ナイロビの平均気温は23度、暑いときでも28度(駐日ケニア共和国大使館HPより)とかなり過ごしやすい気温となっている。私が06年に小泉純一郎元首相のケニア訪問に同行したときは、気温が30度近くてもそこまで暑いとは感じなかった。おそらく、空気が乾燥しているので日本の夏のようなジメジメとした不快感がないからだと思う。これまで秘書官として、内閣参与として様々な国へ行ったが、日本の夏というのは世界でもトップクラスに厳しいものだと感じている。
今年の夏は、少しでも暑さを忘れられるように楽しく過ごそうと、庭から花火大会が見られる友人宅を訪問した。花火を見終わって庭から部屋へ戻ると、友人たちはみんな蚊に刺されて「痒い、痒い」と言っていたにもかかわらず、私だけは刺されていなかった。花火観賞中もずっと吸っていたたばこが虫よけになっていたからだろう。虫がたばこの成分を嫌うかは不明だが、蚊のような小さな虫にとっては煙の粒子も相当に大きいものになるはずで、私に近寄ることができなかったのだと思われる。喫煙者にとって風当たりはきつくなるばかりだが、このときだけはたばこを吸っていて良かったと感じた。
喫煙目的施設では「主食」は提供できない
そして友人宅からの帰り道、駅前の通りを歩いていると、居酒屋前で店員さんに「一杯いかがですか。お席でたばこ吸えますよ」と声をかけられた。これ自体は珍しいことでもなんでもないのだが、その居酒屋のメニューに「ごはんセット」や「シメのラーメン」があったのが妙に気になった。
ごはんやラーメンが気になったのは、お腹が減っていたからではない。法律が守られていないのではないかと思ったからである。
順を追って解説しよう。20年4月に全面施行された改正健康増進法によって、学校や医療機関、自治体の施設のような第一種施設では敷地内禁煙(屋内は完全禁煙)となった。つまり、屋内には喫煙所を設けてはいけないということだ。そして、飲食店やホテル、デパートや映画館などの第二種施設では屋内が原則禁煙となった。「原則」というのは例外があるからで、たばこの煙が流出しないような措置が講じられたうえでの喫煙所を設置することは認められている。喫茶店などで電話ボックスのような喫煙所を見たことがある人は多いだろう。
デパートや映画館では、もともとたばこを吸いながらショッピングや映画鑑賞ができることはほとんどなかったので、現状の分煙措置が法的にも認められた形だ。一方、居酒屋やスナックでは、喫煙者は席でたばこを吸うことが禁止されることになり、店にとっては死活問題である。客がたばこを吸いたくなったら「ちょっと失礼」と言って喫煙所まで立たないといけない。喫煙のたびにいちいち席を立つのはとても煩わしく、席でたばこを吸えない店は喫煙者から敬遠されてしまうので、客足が遠のく原因にもなりかねない。しかし、同法は、席でたばこを吸うことが許される「喫煙目的施設」という区分も規定している。
正式な定義は「たばこの対面販売をしており、喫煙場所の提供を主な目的として、併せて飲食営業(通常主食と認められる食事を主として提供するものを除く。)を行う施設」とされており、バーやスナックといったお店が想定されている。居酒屋というよりはお酒と会話がメインになる小規模のお店に対する救済措置ではないだろうか。
この規定にある「通常主食と認められる食事を主として提供するものを除く」というのは、つまり「喫煙目的施設では、主食を提供してはならない」ということである。雑炊、おにぎりなどのご飯ものやラーメンといったいわゆるシメのメニューが、この「主食」に該当するため、一般的な居酒屋は喫煙目的施設の要件を満たせないのだ。
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