13年4月から男性に関しては老齢厚生年金の報酬部分の支給開始年齢が61歳以降へ引き上げられた。対象は1953年4月2日以降に生まれた人。この引き上げは順次行われ、最終的に25年度には61年4月2日以降生まれの男性の老齢厚生年金の支給開始が65歳からになる。この措置にともなう注意点について、年金の仕組みに詳しいTIMコンサルティング取締役で社会保険労務士の原佳奈子さんは次のようにいう。
「改正高年齢者雇用安定法の成立で、希望すれば60歳以降もいま勤めている会社で継続雇用されます。もし、61歳以降も働き続けるのなら、年金を受給しながら給与も受け取ります。その場合、賞与を含めた年収の月平均額と年金の月額が28万円を超えると、年金額が減額されます。ただし、働いた分だけ厚生年金の加入期間が増えるので、65歳まで働いた場合は年金額が上積みされます。会社に雇用条件を確かめたうえで、年金事務所で年金の額を出してもらい、それも参考にして働き方を決めたらどうでしょう」
一方、年金に関して現役世代が最も気になるのが、現在の制度を維持できるのかということだろう。先にも触れたように、04年の年金改正で当時13.58%だった保険料率は毎年0.354%ずつ引き上げられていき、最終的に17年度には18.3%となる。それでもファイナンシャル・プランナーの八ツ井さんは厳しいと見る。
「各公的年金制度の財政収支のデータを寄せ集めて出した10年度の保険料の総合計額は28兆6853億円。一方、総給付額が48兆8095億円もあって、そのカバー率は58.8%にすぎません。結局、運用収入や国庫負担に加えて積立金の取り崩しで帳尻合わせをしているのです。しかし、積立金もいずれ底をつきます。制度を維持させようとしたら、総給付額を減らすために、支給開始年齢のさらなる引き上げなどの対応が迫られます」
実は11年秋に厚生労働省は社会保障審議会に対して支給開始年齢を68~70歳に引き上げるプランを提示している。当時の小宮山洋子厚労相は「いますぐにやる話ではない」と火消し役に回ったが、こうした話は何度も蒸し返されており、引き上げに向けた“地ならし”と見る向きが多い。