投資ファンドや資産運用会社などのノンバンクが、非上場企業や中堅企業などに直接融資する運用手法「プライベートクレジット」が注目を集めている。30年以上世界の大手金融機関で投資に携わった土屋剛俊さんは「長期投資志向の機関投資家に人気を集めているが、販売会社が謳うほど絶対安全とは言えない」という――。(第2回)

※土屋剛俊『市場の爆弾 プライベートクレジットは破滅的金融危機の引き金を引くか』(講談社+α新書)の一部を再編集したものです。

マルチモニターで株の動きを追うブローカー
写真=iStock.com/AndreyPopov
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プライベートクレジットの「プライベート」とは何か

実はプライベートクレジットはその定義がきわめて曖昧で、「プライベート」が何を表しているのか、よく分からないという面があります。その点にも、このプライベートクレジットという金融商品の性格が表れているのです。

ここで言う「プライベート」は、「パブリック」の反対語としてイメージされています。金融市場で「パブリック」といえば「公開市場」、つまり上場された株式を指します。公開の市場で値段が付き、その日、その時点の時価で誰でも売ったり買ったりできるというものです。

その点で「パブリック」という概念はとても分かりやすく、はっきりしています。

問題はその反対概念としての「プライベート」のほうです。「プライベートエクイティ(株式)」のように使われるときは「未公開株」、つまり株式市場に上場されていない未上場株を指します。

アメリカでは未公開株を対象とする市場もできていて、値付けもされ、プロ投資家以外も購入することができるようになっていますが、これは単に未公開株を売り買いしているだけで、公開の市場に上場されているわけではありません。

投資家保護のため、上場にはそれぞれの市場で厳しい条件が設けられ、それをクリアしないと株式の公開は認められません。

非常にあいまいな概念

このように株式の世界では「パブリック」「プライベート」の区別は比較的ハッキリしていますが、債券や融資の世界ではそれほど単純ではありません。

2025年の高市政権発足以降、日本でも国債の利回りが急上昇し、2026年9月には10年もの国債が3%を超えたことが話題になりました。もちろんアメリカの国債も、イギリス、ドイツなど各国の国債も毎日利回りが変動します。それによって取引価格も変動しますが、債券が株式のように取引所で売買されるわけではありません。

同様に社債も発行企業の信用力や市場環境によって利回りが決められ、投資家を公募して発行しますが、やはり株式のように取引所で市場取引がされるという意味での「上場」ではありません。債券の世界にはそもそも「パブリック」「プライベート」という言葉がないのですから、「パブリック」クレジットという単語は本来おかしな言葉なのです。

誰がこのような言葉を使いはじめたのかははっきりしませんが、どうやら銀行による融資や、公募社債ではないという意味で、「プライベートクレジット」という言葉が使われるようになったようです。

一般的にファンドなどのノンバンクが、特定の企業に対して個別の条件に基づいて融資することや、または融資した資金を証券化したものを指すことが多いようです。