オバマ米大統領が4月22日に国賓として来日することが決まった。

米大統領が国賓として来日するのは1996年のクリントン氏以来18年ぶりだが、喜んではいられない。というのも、昨年末の安倍晋三首相の靖国神社参拝をきっかけに吹き始めた日米間のすき間風が一向に収まる気配が見られないからだ。むしろ、米国からの風当たりは強まる一方である。全国紙の編集幹部が言う。

「共同通信社の特報によると、ケネディ駐日米大使がNHKのインタビューを断ったという。理由は、安倍首相のお友達の百田尚樹NHK経営委員が都知事選の応援演説で“東京裁判は(東京大空襲や原爆投下を)ごまかすための裁判だった”などと発言したためとされる。これは米国を中心とする戦後のヤルタ・ポツダム体制の否定とも受け取れ、米国としては看過できなかったのだろう。百田氏をその座に据えた安倍首相への牽制でもある」

そもそもオバマ訪日の日程も、日米関係の悪化を受け、当初の2泊から1泊に短縮された。昨年2月の日米首脳会談で安倍首相はオバマ大統領に来日を要請したのを皮切りに、日本側は昨秋以降、大統領を2泊以上の日程で国賓として迎えたいと伝え、米側も訪日を決めていた。

ところが今年1月になって、日本と対立する韓国が突然、大統領に訪韓を要請するという横槍を入れ、米側がそれを受け容れたのだ。「日本だけに2泊すると、歴史問題で日本を支持したように映る」とする韓国側の説得が功を奏し、米側は日本での日程を短縮し、日韓に1泊ずつ訪問することにしたのである。韓国メディアは「韓国の外交努力の成果だ」(朝鮮日報)と快哉を叫んでいる。

「靖国参拝について米国は首相に繰り返し自重するようにサインを出し続けたが首相は無視。米政府の異例の“失望”表明につながった。その後の百田委員の発言についても首相は個人的発言として擁護したが、在日米大使館報道官は百田発言を“バカげた発言”と痛烈に批判している。首相はNHKの報道姿勢に批判的とされ、最近も、NHK国際放送が日本では東京五輪への反対がある、と報じたことに身内の会合で強い不快感を示したらしい。米国は、右傾化を強める首相に懸念を深めつつある」(民放報道局幹部)

自説へのこだわりも結構だが、対米関係の悪化は国益を損ねる。国益を優先すべく隠忍自重していただきたい。

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