全国に広がる警察の情報網を活かす
外国情報機関による諜報活動への対応では、これまでも警察が大きな役割を担ってきた。外事警察は外国情報機関の活動、北朝鮮をめぐる動向、国際テロなどについて情報を収集し、犯罪に該当する行為が確認されれば捜査にもつなげる。
警察の強みの一つは、都道府県警察を含む全国的な情報網にある。外国側が関心を持つ対象は、防衛関連施設、大学、研究機関、先端技術を持つ企業など全国各地に点在している。地域で確認された人物の動きや接触を把握し、それを警察組織の中で共有できる点には大きな意味がある。
近年は、軍事や外交に加え、半導体をはじめとする先端技術、経済安全保障、サイバーへ情報活動の対象が広がっている。外国情報機関員による人的な接触に加え、企業や研究機関への接近、サイバー空間を利用した情報窃取など、手法も多様になっている。
外事情報局への格上げは、こうした変化に対応し、外事情勢に関する情報収集と分析の専門性を高める動きと位置付けられる。
公安調査庁と外事情報局の違い
一方、日本には、外国に関する情報を集める組織がほかにもある。その一つが公安調査庁だ。公安調査庁は1952年、破壊活動防止法の施行に伴って設置された。現在は国内外の公安情勢や安全保障に関係する情報を収集・分析し、政府へ提供している。
警察が犯罪捜査や治安維持の権限を持つのに対し、公安調査庁は情報収集と分析に重点を置く。特に、人物から情報を得るヒューミント(HUMINT)と呼ばれる手法を重視しているのは特徴のひとつである。
警察と公安調査庁は、同じ人物や組織を調べることもある。警察は犯罪の捜査が主な目的になるのに対し、公安調査庁は、相手国の政策や組織、人脈などを継続して調べ、政府の判断材料となる情報を集める。
つまり、こういうことだ。外国関係者が日本企業の技術者へ接触したとき、警察は、その人物が日本国内でどのように動いているのかを追う。一方、公安調査庁は人的情報源などを通じて、その背景にある外国側の関心や情勢を把握する。
このとき、その国がどの技術を欲しがっているのか、どの組織が技術獲得を担当しているのかという情報を持っていれば、接触の意味をより深く考えることができる。こうした情報を得るには、語学力はもちろん、相手国の政治や社会への理解、人脈を長期間維持する能力も必要になる。

