スーツ代は、衣服代として申告できます。私生活でも利用できる靴下や下着は難しいかもしれませんが、ワイシャツやネクタイは対象になる。またクールビズを推奨している会社で、着用する服の規定がある場合は、ポロシャツも認められる可能性があります。

もっとも使い勝手がよさそうなのが、交際費です。「得意先や仕入先に対する接待、供応、贈答などの支出=交際費」という国税庁の定義に従えば、その対象範囲は結構広い。得意先と一緒に行った飲食店はもとより、スナック、キャバクラ、ゴルフでも認められるでしょう。現在は取引がない相手でも、新規開拓という目的なら該当するし、お中元やお歳暮にかかる費用は全く問題ありません。

ただしこの「勤務必要経費」は、図書費、衣服代、交際費あわせて65万円までと上限が決められています。使ったら使っただけ、ということではないのでご注意ください。

職務に必要な技術や知識を習得するため、使用した研修費や資格取得費も「特定支出控除」の対象です。英会話スクールへ通う、中間管理職がマネジメントのセミナーに参加する。受講料だけでなく、交通費も含まれるというのが一般的な解釈です。また今までは弁護士、税理士、公認会計士など、特定の業務を営める資格取得は控除の対象外でしたが、改正によって認められるようになりました。

その他、単身赴任の会社員が自宅に帰る際の交通費は帰宅旅費、転勤に伴う引っ越し代や宿泊費が転居費として控除に含まれます。通勤に必要なガソリン代、車両の修理代などは、通勤費として計上できるはずです。

一部、推測で語っているのは、今年から適用される制度で、過去の事例がないからです。税務署も様子見でチェックが甘くなるのではないか、という見方もあります。だからこれはダメだろうと勝手に線引きせず、使えそうな経費に関しては自分の名義で領収書をもらうなりして、申告の材料になりそうなものは捨てないでおきましょう。

確定申告する際、税務署に向かう前にしておくべき手続きがあります。それは会社に「こういう経費を使いました」と報告し、証明書に承認のハンコを押してもらうことです。いかにも手間がかかりそうですが、ハンコを押したからといって会社が金銭を払うわけではありません。「仕事のために必要だったんです」と押し切れば、おそらく認めてくれるのではないでしょうか。また税務署としては会社の判が押してあることが前提になるので、よほど高額でない限り、書類を丹念にチェックする可能性は低いと思います。