申請の仕方次第では、損をする人も
12月の給与明細に同封される年末調整明細書の生命保険料控除の項目を見て違和感を覚えた人もいるかもしれない。2010年度税制改正により生命保険料控除制度が改正され、2012年から新制度へ移行したことから、契約の形によっては「昨年と同額の保険料を支払ったのに、控除額が違う」ことがあるからだ。
改めて説明すると生命保険料控除とは、その年の1月1日から12月31日までに実際に払い込んだ生命保険料(契約者配当金を差し引いた金額)に応じて、一定の金額が契約者(保険料負担者)のその年の所得から差し引かれることで課税所得が少なくなり、所得税と住民税の負担が軽減される制度のこと。
11年12月31日以前に契約した生命保険には旧制度が適用され、12年1月1日以後に契約した生命保険からは新制度の対象になる。
大きな違いは旧制度の生命保険料控除では「一般生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」という2つの控除枠だったのに対し、新制度では「介護医療保険料控除」が単独で新設され3つになった(図1)こと。
また控除額の上限も旧制度では一般生命保険料控除5万円(所得税の場合。住民税は3万5000円)、個人年金保険料控除5万円(同3万5000円)の合計10万円(同7万円)が、新制度では一般生命保険料控除4万円(同2万8000円)、介護医療保険料控除4万円(同2万8000円)、個人年金保険料控除4万円の合計12万円(同7万円)となった。
新制度では控除枠が2つから3つになったことで個々の枠の控除額は減っているが、合計額では増えているため旧制度に比べて有利になる人、不利になる人が生じるようになった。申請の仕方次第では有利・不利が分かれることもあるので、計算方法をしっかりチェックしておきたい。なおここでは所得税分だけを計算しているが、所得税分で有利なほうを選択すれば住民税分も自動的に有利な選択になるので心配は要らない。