近い将来、TOEIC(L&R)は主役の座を譲る

そして、このTOEIC Speaking Testの点数は、今後、ビジネスパーソンの英会話力の指標として一般的なものになると僕は考えています。大多数の人が受験するメジャーな試験になる前に「先読み」してベンチマークとして活用すれば、時代の一歩先を行けるはずです。

すでに多くの方が実感している通り、英語のメールやビジネス文書の「読み書き」は、生成AIを使うことで、以前より遥かに速く、正確に処理できるようになりました。

英語が「読める」「書ける」だけでは、勉強した人とそうでない人の差がほとんどつかなくなってしまったのです。

精密機器大手の島津製作所は、生成AIで効率化し、「翻訳」業務を中心とする外部委託費用を年間8000万円も削減したそうです。(※3)難解な特許文献の「翻訳」という高度な英語のスキルであっても、生成AIによって取って代わられてしまうのです。

僕自身、海外の人とのメールでのやり取りは、「読む」のも「書く」のも生成AIで9割9分完結していて、この能力では差がつかなくなっていることを痛感しています。

これからの時代に圧倒的な差がつくのは、「会って英語で話ができるかどうか」=スピーキングの力です。

現在はまだ多くの企業が従来のTOEIC(L&R)のスコアを基準にしていますが、これは単に人事評価制度のアップデートが追いついていないだけです。近いうちに、TOEICの主役の座はL&Rから、Speaking Testへと完全に移行するはずです。

「スピーキング力の可視化」を企業が求める時代へ

その兆しは、公式な数字に顕著に表れています。

TOEIC主催団体の最新の公式発表によると、TOEIC(L&R)の企業単位での受験者数(※4)の伸びが前年度比で約1.4%増とほぼ横ばいだったのに対し、TOEIC Speaking Testの受験者数は過去最多を記録し、前年度比でなんと約43%増という急激な伸びを記録しています。(※5)

また、株式会社レアジョブがグローバル人材育成に取り組む企業101社を対象に行った調査(2024年)でも、英語力の評価基準として、言語の「運用」能力を重視する世界標準の指標「CEFR(セファール)」を過去3年以内に導入した企業が65%に達しています。導入理由の第1位は、全体の約60%を占める「会話力を重要視しているから」でした。(※6)

時代の潮流は、完全に「スピーキング力の可視化」へとシフトしているのです。

AI英会話であろうと、英会話を始めること自体は素晴らしいことです。大切なのは、その先に明確な「出口」を設定することです。

まんじろう『英語が口からスッと出る! 「一択」英会話』(プレジデント社)
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そのためには、まだ多くの人が十分には活用していない「もう一つのTOEIC」を受けて、自分の現在地を数字で確認してみてください。点数で「見える化」できれば、次に何を伸ばせばよいかも、どこまで続ければよいかも見えてきます。

「英語を専門にするわけではないが、自分の仕事のツール(道具)として英語を使えるようになりたい」というビジネスパーソンであれば、200点満点中「160点」を取れれば十分だと思います。

英会話学習を、出口の見えない暗いトンネルにしないために――。「何を使って学ぶか」だけでなく、「何を目標に、どこまで進むのか」まで決めてから、歩き始めてみてはいかがでしょうか。

(※3)「島津製作所、知財業務をAIで効率化 新会社でサービス外販」(日経新聞2026年3月25日)(2026年8月3日アクセス)
(※4)企業側が求めるスキルを見る意味で、公開テストではなくあえてIPテスト(団体受験)の受験者数を見ています。
(※5)「TOEIC® Program DATA & ANALYSIS 2026」6ページ、12ページのグラフの数字から筆者が算出。
(※6)株式会社レアジョブ「人事評価基準が変わる、人的資本経営の時代にCEFR導入が急増TOEIC®L&RからCEFRへ、研修から人事評価まで幅広い活用が進む」 (2026年8月3日アクセス)