現実問題として、家族が近くにいないケースも多く、十分な支援が得られないこともあります。また、大都市以外では公共交通が十分でない地域も多く、車に代わる移動手段を確保することが簡単ではないのも実状です。実際、免許返納後の生活に関するアンケートで「外出を控える」と答えた人が一定数いました。
免許返納問題は、「安全性」だけでなく「生活を、そしてモビリティをどう維持するか」も大切なのです。
筆者は将来の移動行動全般(モビリティ)を考える取り組みを「モビ活」と呼んでいます。
これは、体の状態や住んでいる地域の交通環境、利用できる支援などを踏まえ、自分に合った移動の方法をあらかじめ準備しておくものです。
運転を続ける場合でも、いずれ運転を断念する場合でも、どちらにしても「モビリティをどう確保するか」という問題は避けて通れません。
だからこそ「いつやめるか」だけでなく「やめた後をどうするか」までを含めて家族や地域社会の皆さんとともに、元気なうちから計画することが大切です。
それが、安心して運転を続けることと、納得して次の一歩に進むことへの準備になります。
クルマじゃなくたって移動手段は確保できる
先にも触れたように、運転に少しでも不安を感じたら、車に頼らない生活について、早めに考えておくことは大切です。
なかには「車のない生活は考えられない」と感じる方もいるでしょう。そうした場合、ご本人だけでなく、ご家族も一緒に考えていくことが重要です。
一般的に軽自動車で車両代や維持費に関わる費用は月々4万円前後になり、普通車でも5万〜6万円程度で、これらの費用は年々高くなっていっています。こうした維持費を必要経費と割り切る向きもありますが、これらの経費相当分を別の移動手段に充てることで、生活の幅を広げることは十分に可能です。
特定小型原動機付自転車など新しい移動手段の選択肢も広がりつつあります。複数のメーカーのものから選ぶことができますし、自宅で試乗できるサービスがあったり、自治体から補助金が出たりと、自分に合ったものを選びやすくなっています。まずは体験してみましょう。
免許返納後も健康的に生きるべし
さらに、買い物や通院をサポートする送迎サービスや宅配・出張サービスもあります。自治体などに問い合わせてみてください。
「運転免許は大人の証し」と感じている方にとって、返納は大きな決断です。免許を手放すことで自信を失い、外出が減ってしまうケースもあります。だからこそ、無理に急ぐのではなく、ご自身やご家族が納得できる形で判断することが大切ではないでしょうか。
免許返納はゴールではありません。本当に大切なのは、その後も買い物に行き、人に会い、趣味を楽しみながら健康を維持して暮らしていけることです。
だからこそ、家族に求められるのは「やめてほしい」と伝えることだけではありません。
その先の移動と生活を、一緒に考えることなのです。


