現場で物資不足が起きていることは認めたが、それは「買いだめや売り惜しみ」などで目詰まりが生じているためだとして、政府を挙げてその解消に取り組むとも表明した。詳細なデータをグラフ化したパネルを示し、時折笑みも浮かべて、ナフサは足りていると繰り返す高市首相だったが、その自信の根拠は最後まで読み取れなかった。
大手食品会社カルビーが、ナフサからつくる印刷材料の不足に備えてポテトチップスなどの包装をカラー印刷から白黒に変えると発表したさい、首相官邸は、露骨に不快感を表明した。ナフサ不足と言われることに神経質になっていたのだ。
高市政権は、かつての石油危機のように消費者がパニックになるのを恐れていたのかもしれない。とにかく、流通過程で売り控えや買い占めだけでなく、将来の供給不安から出荷を控えている業者も多いと見て、必要量の供給のメドなどを「丁寧に」説明することで目詰まりを解消すると言い続けてきた。しかし、事態は急速に悪化している。
振り回される業界関係者の本音
首相の会見が開かれたのと同じ25日には、カルビーが予告通り「ポテトチップス」や「かっぱえびせん」の包装をモノクロに切り替えて売り始めた。
テレビや新聞では、連日、ナフサ不足が次第に多くの業種に影響を与え始めている実情を報じ始めた。カルビーだけではない。様々な商品やパッケージのデザインに使われるナフサ由来のインクの量を減らすためにカラーをやめて白黒に変える企業が続出している。
ユニットバスやトイレの塗料も不足が懸念され住宅建設にも影響が出始めた。スーパーの商品を包む容器からゴム手袋、住宅建材、電化製品、医療用のチューブ、様々な産業現場で深刻な原材料不足の訴えが伝えられている。
首相が強調したように、目詰まりを解消すれば、本当に影響は回避できるのだろうか。断熱材などの住宅建材業界のある関係者は、中東危機が勃発した当初から強い危機感を語っていた。
「中東情勢の悪化でナフサの原料輸入の4割が途絶えました。政府は中東以外からの調達で賄えるというが、先行きの不安が解消されないと状況は改善されません。専門家がテレビで『6月には詰む』と言ったことが現実味を帯びている。そこまでいかなくても、いくら量が確保されても原材料費が恐ろしく高騰することだけは間違いない。目詰まりを解消しても値段が下がるわけではないんです。役所も縦割りだから化学製品は経産省、住宅建材は国土交通省で、対応が違う。業界は振り回されています」というのである。
「首相官邸は責任を取りたくないのですよ」
特に「川中」と呼ばれる中間財の製造は、その多くを中小零細企業が担っている。資金力も乏しく、原材料がストップすればたちまち経営危機に陥りかねない。そうなれば連鎖倒産や大手企業への影響も避けられない。
政府は中東以外の地域からの原料調達で年をまたいでも必要量は確保できるとしているが、ホルムズ海峡の封鎖が解かれたとしても、従来通りの供給が戻るのには長い時間がかかることを覚悟しなければならない情勢だ。

