「役に立っていない?」スクールカウンセラーの存在意味

――わが子が不登校になったとき、スクールカウンセラーに相談してもまったく状況は改善しませんでした。スクールカウンセラーは何のためにいるのでしょうか?

「スクールカウンセラーや担任に相談したのに何も変わらなかった」とおっしゃる親御さんは、実際に少なくありません。それだけ困っておられて、何とかしてほしいという思いで相談されたのでしょうし、その中で変化が見えなかったときの失望は、とても大きいものだと思います。

ただ、「相談すればすぐに状況が変わる」という親御さんの期待と、私たちの実際の関わり方との間には、どうしても“ずれ”が生まれやすいと感じています。

スクールカウンセラーは、生徒の問題を直接解決する存在ではありません。必要な人や支援機関をつなぐことで、問題の解決に向けて親子を支える“チーム”を編成し、整えていく役割を担っています。

医療現場でいう「チーム医療(医師、看護師、薬剤師、理学療法士など、多様な専門職が連携する医療形態)」のように、一人の専門家で完結するのではなく、関係する大人がそれぞれの専門的な役割を果たしながら支えていくイメージです。

よく誤解されやすいのですが、生徒や家庭、学校にはそれぞれ事情や関係性があるため、一人のカウンセラーが関わるだけで状況が大きく動くことは、実際にはほとんどありません。ここで私たちが関わるのは、「すぐには変わらない状況の中で、子どもと親御さんに何が起きているのかを注意深く観察し、コミュニケーションを図ること」です。

子どもが、なぜ動けなくなっているのか。
保護者が、どんな不安を抱えているのか。
家庭と学校との間に、どんなすれ違いが起きているのか。

そういったことを一つずつ整理しながら、子どもを支える親が孤立してしまわないように関係をつないでいきます。担任の先生、養護教諭、管理職、外部の支援機関。スクールカウンセラーは、そうした大人たちをつなぎ、家庭を支えるチームを作る――いわば「チーム学校」のまとめ役でもあるのです。

おっしゃる通り、スクールカウンセラーと生徒やご家庭との関係性は、すぐに結果が見えるものではありません。けれど、スクールカウンセラーが適切に対応するかぎり、変わらないように見える時間の中で、関係は少しずつ整っていきます。

「変わらないように見える時間にも、意味がある」それは何も変えなくていいという意味ではなく、子どもが動き出せる状態を整えるために必要な時間なのです。

スクールカウンセラーの役割は、子どもを学校に戻すことではありません。元気をなくし、自分を責める子どもが、もう一度自分のことを前向きに考えられる状態になるように支え、環境を整えていくこと。そして、一人で抱え込まなくてもいい関係を作ること。それが、私たちの役割だと考えています。

スクールカウンセラーと面談する学生
写真=iStock.com/Satoshi-K
※写真はイメージです

不登校の子どもが動き出した方法

――3万人の親子に寄り添ってきたスクールカウンセラーが伝えたい 10代の子どもの心の守りかた』(実務教育出版)には普川さんが関わられた不登校の生徒さんの8割が自らの動き出すとありましたが、具体的にはどのようなアプローチをされるのですか。

まず前提としてお伝えしたいのが、不登校の子どもにとって、学校に行かないという状態は問題行動というより、「自分を守るための選択」なのだということです。

子どもは、学校よりも家にいる方が安全だと感じているからこそ、その状態を選んでいるのです。

ですから、最初にお伝えするのは、どうやって子どもを学校に戻すかではなく、「いま、その子がどんな状態にあるのか」を親御さんと一緒に見ていくことです。

その上で、まず私たちが関わるのは保護者の方です。親御さんが不安を抱えたままだと、その不安が子どもへの言葉や関わり方に表れ、子どもに伝わってしまうためです。

そこで、まずは学校に行かせるための関わりではなく、「子どもが安心して過ごせる環境を家庭の中に作ること」を一緒に考えていきます。

子どもと親御さんの関わりが少し変わると、家庭の空気も変わり、子どもの状態にも少しずつ変化が生まれてきます。それまで自分を責めることに向いていた意識が少しずつ和らぎ、周りやこれからのことに目が向き始める、といった変化が見えてくることがあります。

そうしたタイミングで初めて生徒本人と会うこともありますが、そこで何かを説得したり、方向づけたりすることはあまりありません。むしろ私が大切にしているのは、その子が学校に行くかどうかではなく、「この先、自分はどうしていきたいのか」を考えられる状態を取り戻していくことです。

子どもは本来、とても主体的な存在です。安心できる関係の中で、自分の状態を少しずつ言葉にできるようになると、その子なりに考え、動き出す力を発揮していきます。

私たちスクールカウンセラーの役割は、その力が働くための環境を整えることなのだと考えています。