「エネルギーでは視聴率が取れない」
実は、現在のエネルギー政策の根幹をなしている第7次エネルギー基本計画(*6)も同様である。
全文82ページに上る計画の中で「国民とのコミュニケーション」と題した個所にはたった2ページを割いているだけなのだ。
ここで思い出されるのが第6次エネルギー計画策定に際し、筆者が末席を汚した「石油・天然ガス小委員会」の場における某テレビ局解説委員の次の様な発言である。
〈エネルギーでは視聴率が取れない〉
〈テレビの向こうのお茶の間の皆さんは、エネルギー安全保障とかエネルギー移行などの難しい問題は、偉い人たちが考えてくれると思っている〉
これが世の実態である。
今回の備蓄放出にみられる報道の背景には本質的に同じ問題があると言えるだろう。
確かに「備蓄254日」というメッセージは、人々に安心感を与えるだろう。
だが、実はこの「備蓄254日」の中には、備蓄とは言えない運転在庫が含まれている。
日本の1日の石油消費量を仮に300万BDとしたら180/300×254=の152日分に縮小されてしまうことや、さらに「民間備蓄」を備蓄ではなく「運転在庫」と認識すれば、180/300×(254-76)=103日しかないことなどの「不都合な真実」も国民に知らしめるべきだろう。
やはり望ましいエネルギー政策を考えるためには、まずは国民が事実を正しく知ること、わが国は「エネルギーを持たざる国」だという冷徹な事実を認識するところから出発すべきなのだ。
政府は、もっと「国民とのコミュニケーション」に注力し、啓蒙活動を行うべきではないだろうか。
一方「エネルギーを持たざる国」であるわが国は、全土が荒廃に帰した太平洋戦争の後、世界が驚愕する奇跡の復興を遂げている。
エネルギーは無いが、知恵と工夫とたえざる努力を継続する人々の底力があるのだ。
これは世界に胸を張っていい事実だろう。
これからも事実は事実と冷徹に認識し、その上でより良き国にするために、望ましいエネルギー政策を作り上げ、官民挙げてエネルギー安全保障確保の努力を続けて行くべきではないだろうか。
*6 「エネルギー基本計画について」資源エネルギー庁

