経営者「このままでは生き残れない」

そうした変化の背景には、企業経営者の危機感の高まりがある。このままでは、厳しい国際競争に生き残ることは難しいとの危惧は増えた。そうした事態の打開を目指し、少しずつではあるが変革が実行されている。

1989年末まで、日本経済は好調だった。一時、一人当たりGDPで米国を上回った。1989年末、世界の上場企業の時価総額トップ10のうち、7社が日本企業だった。当時、わが国の雇用・賃金システムは世界から成功モデルとみなされた。

しかし、転換点がやってきた。1990年初めのバブル崩壊だ。それをきっかけに、経済は長期停滞に陥った。企業経営者も消費者も、景気減速、株価や地価急落の恐怖からリスクテイクを避けた。労働組合は、賃上げよりも雇用の維持(保障)を求めた。

一方、企業経営者はコスト圧縮のため非正規雇用を増やした。政府はインフラ投資など公共事業を積み増して、景気刺激策を取った。わが国の政治家は、「苦境を耐えしのげば、また、景気は良くなる」と考えたのだろう。

いまの給与体系では人材の確保が難しい

ところが、1990年代の米国ではIT革命が起きた。米国企業は投資負担の重い製造事業を台湾、韓国、中国などの企業に委託した。世界的な水平分業の加速である。垂直統合に固執した日本企業は事業環境の変化に取り残され、デジタル後進国ぶりは今なお深刻だ。

現在、国内企業は労働力不足にも対応しなければならない。目先の事業運営に必要な労働力を確保するために、賃上げは避けて通れない。成長期待の高い海外市場における成長戦略の重要性も高まっている。

企業の競争力を高めるためには、「専門家=プロ」の登用が求められる。常に、社内に、必要な人材がいるとは限らない。提携や買収戦略の実行、マーケティング、財務、労務管理、さらには近年リスクが急上昇しているサイバーセキュリティと、実績ある人の給与水準は高い。企業が成長を目指すために、賃金・雇用慣行の見直しは急務だ。

その対応が遅れると、国内外の競合他社にシェアを奪われる。AI関連分野の成長加速で、事業環境の変化の規模感とスピードも格段に高まった。国際競争に対応できないと致命傷になりかねない。危機感を持った経営者は構造改革を推進し、労働市場全体に変化が押し寄せた。

たくさんの人の中から人材を選ぶイメージ
写真=iStock.com/narvo vexar
※写真はイメージです