経済成長期だから意味があった雇用制度
伝統的に、わが国では新卒一括採用、年功序列、終身雇用の雇用慣行を重視する企業が多かった。こうした慣行がいつ始まったかについては諸説ある。約1世紀前の1920年代から、日本企業は熟練工の定着を主な目的に、勤続年数に応じた賃金体系を導入したといわれている。
1950年代半ばから約20年間続いた高度経済成長期、新卒一括採用による労働力の確保を重視する企業は多かった。長期視点で従業員を確保するため、終身雇用の制度も定着した。人口増加・経済成長を前提に、日本企業は年功序列の昇進や昇給を行った。こうした積み重ねで雇用慣行は形成された。今なお、3つの慣行を重視する企業は少なくない。
ただ、近年の雇用を取り巻く環境は急速に変化した。一言でいうと、転職する人が増え労働市場の流動性は上昇した。ある意味では、欧米のような市場環境に徐々に近づいている。
新卒一括採用ではなく、通年採用を実施する企業は増えた。中途採用の比率も高まった。2025年度の中途採用比率は46%程度に上昇したという。
新卒社員は月40万円も稼いでいるのに…
入社年次、その後の勤続年数で賃金が増える年功序列の賃金制度も変容している。同じ部署であっても、実績などに応じて中途採用者に高い給与を支払う企業は増えた。上司と部下の年次が逆転するのは当たり前になりつつある。
新卒者の月給を40万円台に引き上げ、若年層の確保を急ぐ日本企業もある。そうした変化に動かされるように、賃上げの恩恵が及びづらい40代、50代の転職も少しずつ活発化している。
王子HDのように退職一時金を廃止して、その分、月々の賃金を多く支払う企業もある。終身雇用ではなく、2年、3年といった期限で雇用契約を見直す金融機関も増えた。年金制度を、確定給付から確定拠出型に切り替える企業も増えている。それによって、企業の年金運用などの負担は軽減される。
終身雇用の考えも変化している。企業の決算が黒字であっても、構造改革(リストラ)の一環で希望退職を募ることも見かける。もはや、終身雇用の考え方はあまり通用しないとの指摘もある。
