家族の外食では誰が店を決めるのか
一方で、「外界との調和」を目指した子育てのイメージは以下のようなものになります。
たとえば、外食時に子どもの行きたいお店ばかりに行くのではなく、たまには親の行きたいお店を選択するということがあると思います(あった方が良いです)。このような機会に、親子で話し合いながら意見をすり合わせる経験が子どもにとって大切です。具体的には、「この前は○○(子ども)の行きたいお店に行ったから、今日はお母さんの行きたいところにしよう」と伝えたり、子どもが不満を示したとしても「家族だから順番にしようね」とやり取りで子どもの気持ちを納めていくのです。加えて、子どもが本意ではなくても協力したことに「あなたのおかげでお母さんは楽しめたよ」などと感謝の意を伝えつつ、子どもが気持ちを調整したことにも理解を向けるのです。
こうしたやり取りを通して、子どもが「自分のおかげで家族がうまく機能している」と感じられたら、この体験はガマンや自己犠牲にはならず、自分の価値を高めるものになります。
これが「外界との調和」です。心理学者のアドラーは、自らの貢献によって「自分が共同体にとって有益な存在だ」と感じられるときにこそ、自らの価値を実感できるとしています。
「外界との調和」は本来、自分の価値を高め、支えをもたらす体験なのです。
ドラえもんが伝えてくれていること
このような「外界との調和」や、それに伴う「欲求のコントロール」の大切さを伝え続けてくれているのが「ドラえもん」です。
ドラえもんのひみつ道具というのは基本的に「万能」です。しかし、ドラえもんを観た多くの人が、ひみつ道具を乱用したり、独り占めしたりすることで、ひみつ道具を使わない方が良かったぐらいの悲惨な状況になってしまうという「オチ」を知っていると思います。
精神科医の中井久夫は、このドラえもんの構造を「現実原則を教えている」としています。
現実原則とは、現実的な状況や社会規範に合致した行動をとろうとする「こころの動き」であり、自分の思うままに欲求を満たそうとする「快楽原則」と対になる概念です。つまり、ドラえもんの「オチ」には、子どもに「欲求の赴くままに振る舞う=快楽原則で生きる」というのは最終的に損だというメッセージが含まれているのです。
加えて、ドラえもんではひみつ道具を調和的に使うことで、平和的な結末に至る「オチ」も用意されています。欲求をコントロールし、周囲と調和的に振る舞うことの重要性が描かれているわけですね。ドラえもんの登場人物は小学校四年生という設定ですが、そのくらいの年齢には達成しつつあってほしい「こころの発達」と言えるでしょう。


