制作局は「演出」の重さに気付いていたか
ところが先月23日の放送で、番組を揺るがすような事件が起きた。発端は、「6人兄妹の長男を代わって」という小学6年生の男の子からの番組宛ての依頼。それに応え、霜降り明星のせいやが弟や妹5人の世話や家事に奮闘する姿が放送された。
ところが、この場面を見た視聴者からSNSなどで「ヤングケアラーでは」「育児放棄ではないか」といった声が上がり、当該家族に対する誹謗中傷が起こる事態に。
これを受けて、制作局である朝日放送テレビは2度にわたり声明文を発表。家族への誹謗中傷をやめるよう求めるとともに、「普段は基本的に家にいて家事・育児を担当している父親が乳幼児を残して外出する場面、および当該VTRの最後に母親が、『米炊いて、7合』といった発言は、番組の編集・構成上の演出として表現した」として、番組内に「演出」があったことを明らかにした(番組公式サイトより)。
しかしその結果、今度は「演出」を「やらせ」ではないかと疑問視する声が新たに出ることに。むろん局側は否定しているが、いまだに騒ぎは完全には収まっていない。
上岡局長なら違っていたのでは…
一般論として、テレビは事実を「盛る」ことにはきわめて慎重であるべきで、「演出」と主張すればなんでも許されるわけではない。特に『ナイトスクープ』のような真実を追求することを謳った番組では、たとえバラエティであっても事実を「盛る」ことは致命傷になりかねない。
だが声明は、そのタブーを自ら破ってしまったことを吐露したようにも受け取れる。あの『ナイトスクープ』に実際の状況を誇張するような「演出」があったことに、熱心な番組ファンほどショックを受けた可能性もあるだろう。
上岡龍太郎の局長時代にもそうした「演出」があったのか、もしあったとすれば上岡がそのことをどこまで知っていたか定かではない。しかし、「上岡龍太郎がいたならば違っていたのでは…」と考えてしまうのは、上岡自身が『ナイトスクープ』の口上を地で行くような芸人だったからだ。
上岡は、1960年代「漫画トリオ」のメンバーとして人気に。トリオ解散後は、関西圏を中心にテレビ司会者、ラジオパーソナリティとして活躍した。まったくよどみのない語り、そしてそこに織り交ぜられた鋭い批評精神にはすでに定評があった。


