災害も空襲も免れたが
八雲は明治23年(1890)8月30日に松江に到着し、翌明治24年11月、熊本の第五高等学校(現熊本大学)の招聘に応じて熊本に転居した。熊本では2年をすごしたが、西南戦争で城下町が焦土と化した熊本の風景を好まず、松江で親友になった西田千太郎(「ばけばけ」で吉沢亮が演じる錦織友一のモデル)に宛てた書簡にも、熊本のことを「わたしがこれまで日本で住んでいた一番興味のない都市であることに変わりありません」と書いている。
一方、城下町の面影がたもたれ、それゆえに八雲が深く愛した松江は、幸いにもその後、大きな災害に遭うことがなく、太平洋戦争の空襲も免れて今日に至っている。市内玉湯町の基地や列車が爆撃されはしたものの、都道府県庁所在地にしては珍しく、市街地は焼かれずに済んでいる。
結果として、慶長16年(1611)に完成した4重5階の松江城の天守も現存し、平成27年(2015)には国宝に指定された。日本の主要都市の大半が焼夷弾や原爆の投下を受け、古き良き町並みや貴重な文化財が失われたなか、松江は例外的に、町全体が貴重な歴史遺産として残された。いまでは松江は、日本として誇るべき財産であり、いまなお町自体に八雲の精神が息づいている。
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