サルのような愛嬌でかわいがられた

秀吉の異相やひょうきんなところは皆に愛されたとのこと。中古の小袖や絹紬の衣裳を与えられた秀吉は沐浴までさせてもらった。沐浴し袴を着すると、それまでとは打って変わって清らかな姿形となる。

加兵衛に仕えることになった秀吉は、最初は草履取をしていたが、真面目に働いたこともあるのだろう、加兵衛の側近くで仕えるようになった。加兵衛は秀吉にさまざまなことを命じたが、秀吉の仕事ぶりは一つとして加兵衛の心に叶わぬということはなかった。加兵衛が感心するほど、秀吉の仕事にミスはなかったのである。秀吉を信頼した加兵衛は、納戸の取入取出役(納戸役)を命じる。

突然現れて、加兵衛の信頼を得ていく新参者・秀吉。当然、前から仕えていた加兵衛の小姓たちは面白くない。秀吉に嫉妬の炎を燃やす。「小刀が失くなった」と言えば「猿が取ったのだ」と口々に叫び「印籠・巾著きんちゃく・鼻紙」などが失くなれば、猿が盗んだのではないかと疑う有様だった。紛失物があれば、秀吉に疑いの眼を向けたのである(小姓らがそれらの物を密かに盗み、秀吉のせいにした可能性もあろう)。