したがって、自分自身のニーズと成長を肉体、情緒、知性、精神の側面から見て、何が第2領域に入る事柄かを見出し、タイム・マネジメントに組み込んでいくことが重要なのである。
世の中にはタイム・マネジメント・マニアのような人がいるが、タイム・マネジメントはあくまで手段であって目的ではないことを忘れてはいけない。マニアのなかには時間を効率よく使うこと自体が目的になっている人が見受けられるが、それでは本末転倒である。
タイム・マネジメントを手段として活用する目的は何かといえば、あくまで生産性をあげることにある。
ある人が出すアウトプットは量×質で表現される。だが、同じ量×質を出せるとしてもAさんは30分、Bさんは60分かかるとすれば、2人の生産性は2倍も違う。つまり生産性=(量×質)/時間であり、生産性を考えていくときに時間は欠かせない要素である(図4)。
それでは、時間とはいったい何だろうか。What time is it?なら答えは簡単だが、Time what it is?となると答えはむずかしい。
アインシュタインはこう語っている。
「時間とは、時間を計る尺度となっている一連の出来事から離れて存在するものではない」
出来事とはイベントのことである。ウェブスターの辞典によれば、時間とは出来事が過去から現在、未来へと続いていく連続体と書かれている。なので、時間とは出来事の連続体とまとめられよう。
そう考えると、「タイム・マネジメント」という言葉は本質的におかしい。なぜなら、人間は「出来事の連続体」のマネジメントはできないからである。たとえばピープル・マネジメントであれば誰かをある部署に配置したり、指示を出したりすることができる。しかし暇な時期の時間を切り取って忙しい時期に移し替えるなど、誰にもできようがない。
私たちがマネージできる対象は、時間ではなく出来事である。すなわち、タイム・マネジメントの本質は出来事のコントロールにある。逆に出来事をコントロールできなければ、人は出来事によってコントロールされてしまう。