偽装出勤に1日660円…若者が求める「尊厳」
格差が確実に広がる中、若者たちは出口の見えない雇用危機に焦りを募らせる。中国の若年失業率は20%近くで高止まりしている。
BBCは、たとえ職に就いていても、若者の心の内は穏やかでないと論じる。職場では解雇を恐れて萎縮し、夢のマイホームは不動産危機ですっかり遠ざかった。個人消費はGDP比で39%程度と、先進国の60%前後には遠く及ばない。
こうした閉塞感を逆手に取り、奇妙なビジネスが台頭している。無職の人々を相手に、働く「ふり」ができる場を提供するサービスだ。
広東省に住む30歳の男性は、2024年に食品事業が失敗したのを機に、SNSで見つけた「偽装出勤会社」に通い始めた。毎日30元(約660円)を支払ってオフィスで1日を過ごし、5人の他の会員を「同僚」に見立て、会社勤めのふりをしている。
オフィスの写真を両親に送っているため、「親はだいぶ安心したようだ」という。現在はAIスキルの習得に励みながら、再就職の機会をうかがう。
偽装出勤ビジネスの生みの親もまた、失業の苦しみを知る一人だ。コロナ禍で小売事業を失った30歳の男性オーナーは、「売っているのは作業スペースではなく、無用な人間ではないという尊厳だ」とBBCに語る。アイデアをひらめいた当時を振り返り、「とても落ち込み、自暴自棄だった。状況を変えたかったが、無力だった」と吐露した。
今年4月に広告を出すと、わずか1カ月で満席に。利用者の4割は大卒者で、インターン経験を証明する写真を撮影することが主な目的だという。彼はこれを「社会実験」と位置づけ、「偽りの職場が本当の出発点に変わる」ことを願っていると語る。
中国は威圧外交を通じて自滅している
このように国内経済が混迷を深める中でも、中国政府は日本への圧力を緩めない。むしろ、国民の不満を隣国へ向かわせることに利があるとの判断なのかもしれない。
AP通信は、台湾発言の撤回圧力をかける中国の手法が、もはや「おなじみの戦略」であると論じる。2020年にはオーストラリアワインへの関税、2012年にはフィリピン産バナナの輸入制限と、経済力を武器に相手国を威圧してきた。被害者は日本だけではないようだ。
ただし、こうした威圧外交には代償が伴う。
米タイム誌は、中国はアメリカに代わる世界の指導者国の立場を目指してきたが、今回の強硬姿勢により、その信頼を損なう恐れがあると指摘する。専門家は同誌に「日本国民は、関係をここまで悪化させた威圧に憤りを感じるだろう」と理解を示し、「中国の措置は自滅的となりうる」と述べた。
一連の騒動を経て、日米の経済・安全保障の絆がさらに深化したとの指摘もある。国内問題の隠れ蓑として威圧外交を続ける中国は、国際社会での孤立を強めている。

