家電量販店が苦境に立たされている。7月の全店売上高は、最大手のヤマダ電機が前年同月比6.8%減、ビックカメラグループ9.8%減、エディオン8.2%減など、ほぼすべての企業でマイナス。主な原因は3つある。
1つ目はテレビの不振だ。テレビは家電量販店の商品別売り上げ構成比で最も高い位置を占め、その割合は数~10%程度。だが、地上波デジタル対応への需要が一巡し、以後、厳しい状況が続く。3~5月のテレビの売り上げは前年同月比2ケタ減。景気回復期待の高まりから、6月、7月は1ケタ減となり、やや改善されつつあるものの、プラス成長定着までは時間を要しそうだ。
2つ目は新製品がないこと。猛暑の影響でエアコンなど、季節商品の売れ行きは堅調だったが、一方で革新的な商品がしばらく登場していない。
3つ目はネットとの競争激化。スマートフォンの普及により、リアル店舗がインターネット通販サイトに脅かされている。ネットで下調べを行い、店舗で現物を確認し、価格の安い通販サイトで購入する──。こうした購買パターンをショールーミングと呼ぶ。数年前から米国で増加し、日本でも今年に入ってから目立つようになってきた。
競合他社より安い価格で商品を販売する「最低価格保証」。家電量販店の多くが採用しているが、これまでネット通販の価格を対象外とするケースがほとんどだった。だが、ヤマダは5月からアマゾンなどの通販サイトへの対抗を開始。このことが、同社の利益率の低下に拍車をかけている。
今後もネット通販の勢いは増すと考えられる。価格勝負に陥ってしまえば、家電量販店業界の先行きは暗い。
厳しい状況下で業界中位ながら唯一、前年比でプラス成長するのがPCデポだ。パソコン販売ショップを展開する同社は、有償サポートなど、付帯サービスの需要を取り込んでいる。
ヤマダは2011年に住宅メーカーのエス・バイ・エルを買収し、家電と住宅、太陽光発電システムなどのセット販売に力を入れている。エディオンも8月、住宅設備最大手のLIXILと提携し、リフォーム事業を強化する。両事業とも新たな収益源となるかは未知数だが、新しい売り方を模索しない限り、活路は開けないだろう。