明治維新は本当に輝かしい偉業だったのか

【茂木】「文学士だけにご苦労千万な服装なりをしたもんだ。それが赤シャツだから人をバカにしている」と、自虐も甚だしい。

茂木 健一郎
撮影=門間新弥
茂木 健一郎

それで、なぜ僕がここで漱石を持ち出したかというと、先ほどの話に戻るからなんです。つまり山口さんの「明治維新をどう評価するか」という問題に、まさに漱石はぶち当たっていたから。近代化を求める新日本の期待を背負って西欧に学んだ漱石は、直接西欧文明に触れることができた。でもそれゆえに、大いに悩み、葛藤し、日本の現状と未来を憂い、最終的には滞在先のイギリスから「夏目狂せり」と電報が来るまで追い詰められてしまった。そうした彼の不安、懸念は、残念ながら、現代にまで持ち越されています。