「どうか熊さん親子三人の命を助けて下さい」
一方で、クマがまさに赤児をさらうところを危うく助け出した事例もある。
十一月十九日午前十一時頃、網走川向の農家、一ノ瀬イト(二九)が昼飯の準備中、長男義一(六ツ)が隣家の子供二人と遊びに出かけたが、しばらくして子供二人が息せき「熊が出た」と蒼くなって逃げて来た。義一の姿が見えないので、イトは二歳の男の子を背負ったまま裸足で駈け出し、我が子の行方を探し回るうち、遙かの藪中に義一の足をくわえ引きずっていく大熊を見て、半狂乱の有様で近づき、義一を抱えて引っ張ると、義一のゴム靴だけ熊の口に残り、義一を熊から奪い取って小脇に抱えたが、熊はなおも義一の足に喰い付こうとするので、イトは真っ青になってふるえ上がり、絶体絶命「どうか熊さん親子三人の命を助けて下さい、決して仇をしないから」と手を合わせて二、三度拝んだ。その精神が熊に通ったかどうか、熊もボンヤリ二、三間後退したので、イトは義一を抱いて一目散に駆け戻り、網走の病院に義一を入院させた(「小樽新聞」大正11年12月4日 抄出)
6歳児が「密林」の中を4キロも歩いた?
以下の事件も、人さらいグマを連想させる不可解な事件である。
勇払郡厚真村で、同村大字下振内村中山長蔵の二男清治(6歳)が付近の小川に遊びに行ったが、そのうち清治の姿が見えなくなったので、部落民総出で三昼夜、ほとんど不眠不休で捜索したが皆目分からなかった。
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