いかにして心の平和を築くか

今の日本は、そうした状態なのでしょう。しかし、今起きている問題の多くは、人間によってつくられたものです。いわば、自分たちの手で、不必要な問題を生み出したわけです。

なぜ、このようなことになってしまったのかというと、私たちの現実に対する認識が不十分だったからです。それゆえに、自分たちが望んでいないにもかかわらず、次々と要らぬ問題をつくり出すという結果になっています。

では、人間が自分でつくり出した問題を解決していくためには、どのような態度が必要なのでしょうか。それは再三再四述べているように、ものごとを全体的な視野に立って考えるということです。

非常に複雑な現実のありようというものを正しく把握しようと思ったら、1つの角度からだけその問題を捉えてはいけません。全体的な視野、さまざまな角度から問題に光を当てる必要があります。

私の話をしましょう。最近のチベットの状況を見聞きすると、それはとても希望を持てないものに思えます。チベットでは、宗教の自由を求める僧侶が相次いで焼身自殺を図っているのです。チベットでは、チベット仏教を破壊する「文化的虐殺」が続いています。

そうした現実を見るとき、私はより大きな視野で見るように心掛けます。中国国内の変化、中国のいろいろなコミュニティの中での人々の声に目を向けるわけです。北アフリカの各地で巻き起こった民主化運動にも思いをいたします。そうすると、希望が見えてきます。つまり、広い視野で見ると、チベットにも希望の灯をともすことができると思えてくるわけです。

日本人も少し時間的に広く見れば、能力の高い人たちだということがわかります。戦後の復興などは、いい例です。あなたがたは、立派に国を立て直しました。とても強い人たちです。経済大国を生み出したのは、神の加護があったからではありません。あなたがたの勤労と自信の賜物なのです。