5割は大げさにしても、20%はいくのではと発売したところ、1桁のシェアにとどまっている。商品としては環境大賞やマーケティング大賞に輝き、話題性も十分なのにだ。

「なんで買わないんですか? と尋ねると、『こんな少量で従来と洗浄力が同じなんて信じられない』とか、『なんですすぎが1回でできるのかわからない』と言う。節水も節電も環境もすべてを伝えようとして、逆に商品のよさが消費者にしっかりアピールできてなかったんです」

味の素が2009年8月に出し、売れ行き順調の「GABANスパイスドレッシング」も発売当初は消費者心理に惑わされた。マーケティングチームの中心にいたのが駒瀬元洋氏だ。入社以来18年間ずっとマーケティング畑を歩んできた。

味の素がこれまで何度か挑戦しては跳ね返されてきたドレッシング市場を切り崩す新商品を発売せよ――駒瀬氏に至上命令が降りたとき、「正直頭を抱えた」という。

「すでに200種類以上のドレッシングが存在し、味も完成度が高かったので、私たちが入り込む隙間はないように見えました」

新ドレッシングの商品設計にあたり、1つだけ会社側から出された制約があった。グループ会社のGABAN社のブランドを活用することだ。GABANは黒コショウを核にした香辛料のブランドだ。香辛料は肉や魚介と馴染みがいい。

そこで、調査で評判のよかった「豪華な副菜」というキャッチを付け、野菜と肉、魚介をドレッシングで混ぜ合わせる食べ方を提案した。容器も豪華さを演出するインテリア感覚の洒落たデザインだ。発売から2カ月は予想の5割増しで売れた。

ところが10月に入って急ブレーキがかかる。慌てて、グループインタビューや1対1のデプス調査(ディテール・インタビュー)を実施した。

「1回は物珍しさで買ってもらえても、2回目からは『副菜まで豪華にしていられないわよ』とリピートしてもらえなかったんです。こちらとしては『それいいね』と言うから出したのに、後から『コンセプトはわかるけど、実際には使いこなせないよね』という本音が判明し、裏切られた思いです」