工場の「常識」を根本から覆した

「工場は進化する製品である」

この思想を最も具体化しているのが世界各地の「ギガファクトリー」だ。ギガファクトリーとはマスクの造語で、超大量生産が可能な工場を意味する。ここでは上海、テキサス、ベルリンの事例を紹介しよう。

上海:スピードの象徴

2019年に着工し、わずか1年で稼働を始めた上海ギガファクトリーは、従来の常識を覆すスピードで立ち上げられた。モジュール化と標準化を徹底し、建屋やライン、IT基盤をブロックのように組み上げ、デジタルシミュレーションで施工を最適化した。主要サプライヤーを工場周辺に集約し、在庫や輸送リスクを最小化。稼働後も週単位でボトルネックを特定し改善する運用を定着させ、学習曲線を劇的に短縮した。

テキサス:密度を再設計する

オースティンのギガファクトリーは「密度」を徹底的に追求した工場だ。象徴的なのは巨大一体鋳造機ギガプレス。従来数十点を溶接していた部品を1回で成形し、設備や床面積、ロボット数を一気に削減した。さらに電池パックを車体構造に組み込む「構造電池」によって部品点数を減らし、段取りを簡素化。複雑なものをそのまま自動化せず、まず単純化してから自動化する――第1原理思考の実践である。

ベルリン:止まらない速度

ベルリン工場は「止まらない速度」を体現する。AIによる外観検査で初回合格率を高め、再作業によるライン停止を削減。設備データを常時監視し、故障を予測して計画外停止を防ぐ。厳しい環境規制にも対応し、水循環やエネルギー最適化でCO2削減とコスト低下を同時に実現している。

以上のように、上海はスピード、テキサスは密度、ベルリンは安定性、アンボックスド方式は柔軟性――それぞれが異なるテーマで進化し、テスラ全体で学習する工場ネットワークを形成している。