30個のお題を1つひとつ議論。

田中さんによる2回目の授業の日。まずはお題に対する改善点の指摘から。お題の段階で「マクドナルドに行く人は稼いでいる」という答えを決めつけるのはよくない。むしろ、「忙しいビジネスマンがマクドナルドに行くと節約以外でどんなメリットがあるのか」という視点で考えるべき。ただし、「時間短縮で生産性アップ」だけではひねりが足りない。お題に無理がありそうだ。

すると田中さんは意外なことを言う。

「ファストフードという最初のテーマに固執する必要はありません。企画を考えるとっかかりとして、キーワードが必要なので設定しただけで、唯一の目的は面白い企画を出すことですから」

例えば、内林くんの自信作「覆面座談会! 私もつい食べてしまうライバル店のファストフード」は、ファストフードという自主規制を外せば「ライバル社のココがすごい」という斬新なお題に変身。実現可能性は別として、「カルロス・ゴーンがトヨタ車に乗ったら」などの企画が考えられる。自由度が一気に高まった。

「これはしょぼすぎるかな。でもたくさん出さなきゃいけないし」と苦し紛れに出した企画が、田中さんのアドバイスでどんどん膨らんでいった。

ただし、単なるアイデア(お題)を企画に昇華させるには、「それによって何を得られるか」「なぜそれをする必要があるのか」に答えねばならない。大喜利思考に必要な4つの能力のうち、お題に最良の答えを出す「解決力」が問われる。

田中さんは例を挙げて教えてくれた。高校生がたむろするファストフード店への「不満」から内林くんが思いついた「恨みを買わずに若者をたしなめる方法」というお題は、「プレジデント」読者層のメリットと必要性を考慮すると次のように変わる。若者→部下、恨みを買わない→尊敬される。「部下を叱っても尊敬される方法」という企画の誕生である。

「叱って尊敬される。2重のメリットですね!」

授業中ずっと萎縮気味だった内林くん。しょぼかった自らのアイデアが、格段に改良されるのを目の当たりにして表情が明るくなってきた。「誌面でやりたいアイデアを3つ選んで企画にしましょう」という田中さんに対して「4つでもいいですか?」と前のめりの姿勢を示した。