アメリカではリーマン・ショック以降経済が低迷し、日本経済はいまだにデフレから脱却できず、ユーロ圏は崩壊の危機にある。こんな中で、「世界の金持ち父さん」はどんな考えにもとづき、何に投資しているのだろうか。
ドル紙幣を燃やすパフォーマンス
――なぜ、一流の大学を卒業しても、金持ち父さんのようなフィナンシャル・リテラシーを身につけることができないのでしょうか。
【キヨサキ】金本位制から負債本位制に変化したときに、教育もそれにあわせて変える必要があったと思います。しかし、ハーバード大学でも、MIT(マサチューセッツ工科大学)でも、負債本位制のなかでどのような経済活動が必要なのかについて教えていません。
経営破綻した米証券大手のMFグローバルやリーマン・ブラザーズにも、巨額の損失事件を起こしたゴールドマン・サックスやJPモルガンの金融のプロたちにも、MBAを取得した優秀な人々がいたはずです。
一方で、アップルのスティーブ・ジョブズ、マイクロソフトのビル・ゲイツ、オラクルのラリー・エリソン、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ……これらの億万長者はいずれも大学教育をまっとうしていません。
立派な教育を受けた大勢の人々が、職業上は一応の成功をおさめているのにもかかわらず経済的には苦労しているという事態はなぜ起きるのでしょうか。それは、ほとんどの人が金銭・財政的技能を身につけることなく学校を卒業して仕事についているからです。彼らの受けた教育に不足しているのは、「どうやってお金を稼ぐか」ではなくて、「お金を稼いだあとどうするか」なのです。お金をどうやって自分のために働かせるかということを知らなければ、いくらお金を稼いでも金持ちになることはできません。
日本でも、優秀なサラリーマンをつくる教育、医師や法律家を生み出す教育は一生懸命やっていますが、起業家を生み出す教育が実は必要なのではないでしょうか。
最近、私は講演のときに、聴衆の前でドル紙幣を燃やしてしまうというちょっとしたパフォーマンスをしています。紙くずに等しいほどの価値になった国の紙幣をお見せすることもあります。お金の価値が劇的に下がっていることを感じ取ってもらい、マインドシフトしてほしいからです。ほんのわずかですが負債を減らしてあげて、アメリカ政府にお礼をしたことにもなります(笑)。