アメリカではリーマン・ショック以降経済が低迷し、日本経済はいまだにデフレから脱却できず、ユーロ圏は崩壊の危機にある。こんな中で、「世界の金持ち父さん」はどんな考えにもとづき、何に投資しているのだろうか。
ロバート・キヨサキ氏は、全世界で2800万部を超すベストセラー『金持ち父さん 貧乏父さん』(『Rich Dad, Poor Dad』)の著者である。
同書には、2人の「父さん」が登場する。1人の父さんは、博士号を取得し、政府の優秀な役人として一生懸命働き、生涯お金に苦労した実の父さん。もう1人は、高校を出ていないが資産のつくり方を学び、ハワイ有数の資産家となって慈善事業に大金を寄付した「金持ち父さん」。正反対の2人の父を対比しながら、金持ちになるか貧乏のままで終わるかの分岐点を解き明かしている。
同書では、働けど働けど楽にならない生活を「ラットレース(いたちごっこ)」にたとえ、たくさん稼げば金持ちになれるという「常識」が覆されている。
9年ぶりに来日したキヨサキ氏に、この世界的な経済危機のもとで金持ち父さんになるための考え方を聞いてみた。
――12年3月に行われたプレジデント誌の調査によりますと、年収が低ければ低いほど仕事の目的が給料であるという結果が出ています。この結果は、「ラットレース」から抜け出せないでいる人々の象徴的な現実を表していると思います。なぜ一生懸命働いても、なかなかお金が貯まらない人が多いのでしょうか。
【キヨサキ】ラットレースから抜け出して「金持ち父さん」になるには、お金の勉強をしてフィナンシャル・リテラシーを身につけなければなりません。
私の体験をお話ししましょう。1971年、私はベトナム戦争に従軍していました。ある日、フルーツを買おうとしてドル紙幣を差し出すと、店員に受け取ってもらえませんでした。「何が起きているんだろう?」と、そのときは不思議に思いました。それは、ニクソン大統領が金本位制をやめたことに原因がありました。金本位制では、貨幣の価値が金によって裏付けされていましたが、それがなくなるので、店員はもはやドルを信用できないと思ったからでした。
73年に戦争から戻ると、私はこれからどう生きていけばよいかを2人の父さんに相談しました。「貧乏父さん」は、「一生懸命勉強してMBA(経営学修士)をとりなさい。そして大会社に就職して、安定した仕事を見つけてほしい。給料以外に福利厚生の充実した会社を選ぶことも忘れてはいけないよ」と答えました。一方、「金持ち父さん」は、「お金がどんなふうにして働くのかを学んで、お金を自分のために働かせることができるようになりなさい」と言いました。私は、じっと考えて、金持ち父さんの教えに従うことにしました。