ポール・マッカートニーの後援で1996年に設立された音楽・演劇学校、リバプール・インスティテュート・フォー・パフォーミング・アーツ(LIPA)が、来年秋に小学校を開校すると発表した。演劇やダンス、歌、作曲などの授業を通じ、仲間と協力しながらプロジェクトをやりとげる力を育てるという。
この小学校は、デービッド・キャメロン首相率いる保守党政権が2010年より導入した公設民営校「フリースクール」の1つ。教員免許を持たない人も授業を行えるなど、労働党政権時代に作られた公設民営の「アカデミー」より、カリキュラムや運営面の自由度が高い。
今年、設立許可を受けたフリースクールは、文学教育重視の中学校、人気DJの音楽高校など、昨年の倍にあたる100校以上。貧困地域の学校再生をめざした例が多いアカデミーに対し、「公立学校に不満を持つ中産階級の親たちが、自らの手で新しい学校を作れるようにした制度とも言われています」と、イギリスの教育改革に詳しい長野大学の久保木匡介准教授は説明する。
一方で、フリースクールが教育的に優れているかどうかはまだ評価できないと、同准教授。まず、教員資格不要で教育の専門性が保たれるのか。また、既存の建物の一角を間借りする学校もあるなど、「施設面ではかなり劣った印象を受けています」。公教育を担うにふさわしい制度に育つか、今後も注目だ。