あのフランスが、大学の授業を英語で?――そんな法改正案が、フランスの下院を通過した。

フランス人にとって、フランス語は文化的アイデンティティーであると同時に、革命以来の国家統合の核。当然、国の教育政策でも根幹と位置づけられ、幼稚園から大学まで、公立校ではフランス語以外での授業が原則として禁じられてきた。

今回の法改正はこうした制限を緩和し、大学での英語による授業の拡大をめざすもの。日本と同様、フランスの大学も、いわゆる「グローバル化対応」を迫られていることが背景にある。多くの学者や文化人、教職員組合がこの改正案に猛反発。与党の議員からも反対の声が上がったが、「教育的見地から必要とされる場合」との1文を加え、どうにか可決された。

とはいえ、今後英語による授業がどこまで拡大するかは微妙なところ。「英語での論文数などが評価される傾向にあるとは聞きますが、フランス語中心の大学教育はそう変わらないでしょう」と言うのは、中央大学の池田賢市教授だ。途上国と違い、母国語で高い水準の研究ができる環境があるのだから、授業は母国語で、論文や研究発表だけを英語で行えばすむ話。留学生増についても、英語で教育を受けたい若者がわざわざフランスを選ぶか……。あれ、どこかの国でも同じような話が。

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