人びとはどのサービスをどの程度利用し、その傾向は年々どのように推移しているのか――。プレジデントオンライン編集部がビデオリサーチ社と共同でお届け する本連載。首都圏の消費者を「お金持ち」層(マル金、年収1000万円以上)、「中流」層(マル中、年収500万円以上から1000万円未満)、「庶民」層(マル庶、年収500万円未満)という3ゾーンに区切り、生活動態の分析を試みている。今回からは、郊外・都心を問わず次々に登場する複合商業施設 を検証していく。


 

年収1000万円以上のマル金層の複合商業施設利用を見てみよう。

まず全体に利用者数自体が他の層の人たちよりも低いという印象である。他の層で今年1位のレイクタウン越谷に至っては半分以下だ。この層はわざわざ車に乗ってリーズナブルなものを買いに複合商業施設に行くということが少ないと考えられる。

しかし、中でも僅差で今年1位となっているのは港区・お台場のヴィーナスフォートだった。ヴィーナスフォートは、2009年12月に「ヴィーナスアウトレット」として衣料品などの専門店があった施設3階を全面改装。アルマーニ、ハンティングワールドなど約50店の高級ブランドを誘致したことが注目された。

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年収1000万未満の2層で突出したレイクタウン越谷だが、マル金層では苦戦しているようだ。

富裕層は、レイクタウンのイオンモールで食料品を買うのではなく、アウトレットで日頃の生活+αの衣料品などを買いに出かけるものと見られる。

このグラフを見ながら、長きにわたり商業施設の企画・開発に携わって来たマーケティングコンサルタントの西川りゅうじん氏に話を聴いた。

最初に今年の商業施設についての概況はどのようなものだったか。

「2012年は新たな商業施設戦国時代の幕開けの年でした。押上のスカイツリータウン、お台場のDIVER CITY 、原宿の東急プラザ、渋谷のヒカリエなど、既にオーバーストア状態の首都圏に数々の新たな施設が完成しました。また、“エキナカ”という商業施設のカテゴリーも進化しつつあります。その代表が創建時の意匠を復元した東京駅です。何でもネットで手に入る時代です。ただ服や靴を購入したり食事したりするだけではなく、テーマ性や回遊性を高めたリアルな買物の楽しさが伝わる、ショッピングエンターテインメント性の高い商業施設でなければ生き残れない時代になって来ています」