日本政府による尖閣諸島国有化をきっかけに中国との関係が悪化したことで日本経済への打撃が懸念される。大和総研の試算によると、年間12兆円余りの対中輸出が1カ月間ゼロになったと仮定した場合、各種機械、化学製品など裾野が広い業種を中心に広範囲に影響がおよび、全産業で2.2兆円の生産減になるという。

同社チーフエコノミストの熊谷亮丸氏は「中国全土に拡大した反日デモは収束に向かったが、領土問題を中心とした火種は依然としてくすぶり続ける。日本企業は、こうした政治的リスクを回避するために、ここ数年いわれている“チャイナ・プラスワン”すなわち中国以外にもう1カ国、アジア地域に第2の拠点を確保する動きを加速していく」と分析する。

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労働コストの国際比較

その際、労働コストも重要な選択要素になる。当然、ASEAN諸国は中国やインドよりも安い。2011年度の月額賃金で比べてみると、中国(北京)が538ドル(約4万円)なのに対し、ベトナムは130ドル(約1万円)で4分の1。ここにきて民主化の道を歩み始めたミャンマーにいたっては68ドル(約5000円)で8分の1程度となっている。

もちろん、それぞれの国にもリスクはある。熊谷氏は「インドやタイは、それなりにインフラも整っているがコストは上昇気味。ベトナムは縫製業などが先行して様子見の状態。ミャンマーはインフラこそ未整備だが、国民の識字率が92%と高く、これからは有望だろう」と話す。いずれにしても一長一短があり、投資のメリットを慎重に見極める必要がありそうだ。

(ライヴ・アート=図版作成)
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