──世界自動車市場は、いつ1億台に到達すると予想するか。
スズキ会長兼社長 
鈴木 修氏

鈴木 そんなことはわからんよ。自動車産業の将来とか、世界経済と自動車との関係といった大きな話は、余裕のある会社に聞いていただきたい。中小企業のスズキは、生存をかけて日々頑張っていくだけ。

──スズキはインド事業への依存度が大きいが。

鈴木 国内で108万台、海外で197万台(2012年度予想)の生産だが、海外生産の半分に当たる100万台がインド。つまりインドの“一本足打法”になっているのは問題です。そこで、タイに工場を建設して、12年3月から「スイフト」の生産、販売を始めました。ASEANと中国とのFTA(自由貿易協定)、タイ政府が推進するエコカープロジェクトに適合する車をつくるという考えからです。今年度は1万2000台ですが、14年度には5万台を目標にし、インドネシアの約10万台と合わせてインドに続く柱にしていく。タイ工場には、日本の工場から150人の従業員が行っている。指導ではなく、タイ人の従業員と一緒に働いているのです。

──スズキにとって初めての試みでは。特に、言葉の問題をどうするのか。

鈴木 初めてです。一緒に生産ラインに入り、例えば組み付けをする。マン・ツー・マンで、日本人のベテランがタイ人の新人に作業をしてみせるのですよ。言葉は関係ないです。現場では、目の前にモノがあり、共通の目的があるから、ハート・ツー・ハートで通じ合える。「やってごらん」と日本語で話しても、通じるものです。

タイ工場が日本工場と同じ品質を確保するために、こうしました。タイ製スイフトは、アジアはもちろんオーストラリアにも輸出していくのですから、品質が落ちたら通用しない。日本の工場からも、世界の工場に人が出ていくようになっています。