企業不祥事が問う日本の企業統治の信頼性

宮内義彦オリックス会長・グループCEO。1935年、神戸市生まれ。関西学院高等部、関西学院大学商学部卒。米ワシントン大学経営学部大学院修士課程(MBA)修了。60年日綿実業(現双日)入社。64年オリエント・リース(現オリックス)入社。70年取締役、80年社長・グループCEO。2000年会長・グループCEO。03年取締役兼代表執行役会長・グループCEO。

オリンパスと大王製紙の不祥事で、日本の上場企業におけるコーポレート・ガバナンスの信頼性が問われた。海外からは“日本の特殊性”と指摘されたが、こうした事件は国内外を問わず起こるものだ。エンロンの巨額不正経理やリーマンショックもアメリカのガバナンス体制下で発生している。

コーポレート・ガバナンスの構築は必要であるが、今回の事件は、オリンパスが損失隠し、大王製紙が巨額借り入れと事情は異なるものの、いずれも社長、会長が深くかかわっていた。経営トップが強い意志を持って不正を行ったとしたら、それを止めるのは難しい。いずれの事件もコーポレート・ガバナンス以前の問題である。

もちろん、日本企業のトップは生真面目すぎるほど真面目に経営に取り組んでいる。従業員を大事にし、顧客との長い関係をつくり上げようと心がけてきた。“日本的経営”ではそうした面が重視されてきたが、収益などの計数で見たとき、日本企業が欧米企業を凌駕するだけの経営力を発揮していると胸を張れるかといえば、残念ながらそうなっていない。例えば、オリンパスにしても高い光学技術力で医療用内視鏡では世界シェア約7割を占め、優良企業といわれてきた。しかし、財務内容に目を向ければ、必ずしも高収益企業とはいえない。つまり、イメージと実際の数字にはギャップがある。

効果的なチェック&バランスやコンプライアンスを目指すうえで、日本企業の取り組みはまだまだ不十分だ。一般的には監査役がその任に当たるが、彼らはもともと会社内部の人たちである。社内から選ばれた取締役の立場も同様で、1人や2人の社外取締役を置いたとしても十分には機能しない。それゆえ、さらなる法制化の動きもあるが、安易な規制強化には反対だ。