「日本人宇宙飛行士」全12人が初めて口を開いた

ノンフィクションライターにとって、インタビューとはなにか。稲泉連の新刊『宇宙から帰ってきた日本人 日本人宇宙飛行士全12人の証言』(文藝春秋)はひとつの解を指し示す一冊だ。

稀有な体験をした宇宙飛行士たちは、貴重な記録を自ら書き、大量のインタビューを受けている。だが、この本に並んでいる言葉は、これまでと少し違う。自らの人生にとって「宇宙」に行ったこと、宇宙から地球を見たことがどのような影響を与えたのか――。稲泉の問いかけに、12人は新しい言葉を探している。なぜそんな問いが生まれたのか。

撮影=プレジデントオンライン編集部
ノンフィクションライターの稲泉連さん

《立花隆さんの『宇宙からの帰還』という本が、この仕事を始める前から大好きだったんです。アメリカの宇宙飛行士を中心に、彼らの神秘的な体験や宇宙の経験とは何かというのを詳細に聞いています。

いつか、自分も立花さんのように、宇宙飛行士に話を聞いた本を書いてみたいと思っていました。宇宙飛行士は遠い存在だと思っていましたが、金井宣茂さん(自衛隊で外科医として勤務し、2017年に宇宙へ行く)はほぼ同世代で、「もう自分と同世代が宇宙で働く時代になったのか」と話を聞いてみたくなったんです。》

日本人で最初の宇宙飛行士となったのは、1990年当時TBSの記者だった秋山豊寛だ。1995年にTBSを退職した秋山は福島に移住し、無農薬農業を始めている。2011年の原発事故で福島を離れて、現在は京都に拠点を移している。

この本は、取材時に75歳になっていた秋山の経験から始まる。