戦国、幕末の偉人、西洋の哲人の生き様から孤独の力を探ってみる。孤独=寂しいものではない。見失いがちな本当の自分を発見するチャンスなのだ。

もし彼らが孤独を嫌えば、歴史が変わった

「歴史上の英傑たちは皆、孤独を抱えていました。孤独であることの最大の利点は、自分と向き合い、冷静に考えることができるということです」と歴史家の加来耕三さんは言う。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Chalabala)

戦国や幕末など、命のやりとりをする時代であれば、死を意識し、自分と向き合わざるをえない。しかし、平和な時代に孤独と向き合うのは難しいのではないだろうか? それは違う、と加来さんは否定する。

「平時に自分と向き合っていない人が、非常時に役立つはずがない。常に自分と向き合ってきたかどうかが、有事に問われるわけです。孤独を噛みしめ、自分の人生をいかに歩むかを考えたことのある人間だけが、いざ鎌倉のときに輝く」(加来さん、以下同)

幕末の英雄で、孤独を感じさせる人物の筆頭といえば、冷酷非情なイメージのある大久保利通だろう。

大久保利通(1830-78)
維新三傑の1人。島津久光の側近として薩摩藩を倒幕へとリードする。維新後は、版籍奉還、廃藩置県などの公布を行い中央集権体制を確立。不平士族により暗殺される。

「大久保は特別頭がよかったわけでもないし、剣が優れていたわけでもない。ところが、“人斬り半次郎”と呼ばれた桐野利秋ですら、大久保に文句を言いに行くときは、恐ろしくてしらふでは会えなかった。そこで、芋焼酎を引っ掛け、勢いをつけて行くのですが、大久保に『なんじゃち?』と睨まれたとたん、酔いが覚めたといいます。

維新後も彼が内務卿のときは、内務省の建物の入り口に立っただけで、大久保がいるかいないかがわかった。いると私語がまるで聞こえてこない。シーンとしていたという伝説があります」

その迫力、重厚感はどこから生まれたのか。加来さんは大久保が20代のときの事件に焦点を当てる。