どんな人間でも失敗はしてしまう。緊急事態に陥ったとき、どんな「屁理屈」であれば、その場を切り抜けられるのか。今回、5つのテーマで実例を収集し、作家の架神恭介さんに考察してもらいました。第5回は「ノルマを達成できなかった」です――。

※本稿は、「プレジデント」(2018年12月17日号)の掲載記事を再編集したものです。

今すぐ取り掛かれる予防法

ノルマを達成できないなど、成績不振を理由に上司に詰め寄られるケースは誰にとっても嫌なものです。そういった場合、どのようにしてうまく誤魔化すべきでしょうか。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/maxsattana)

まず、予防的な手段としては、普段からこまめに上司に経過報告をしておく、というのがあります。逐一指示を受けて実践しておけば、成果が出たなら「(上司の)ご指示のおかげです」となって上司も気分がよく、ノルマ未到達だったとしても怒られはしないはずです。

別の方法としては、結果目標と行動目標を決めておく、というものがあります。「営業で月に200万稼ぐ」が結果目標だとすれば、「月に50社を訪問する」が行動目標です。50社訪問すれば200万の売り上げに繋がるかどうかはわからないため、結果目標の達成には揺らぎが生まれますが、行動目標のほうは計画的に行動すれば達成できるはずです。「結果目標のために定めた行動目標は達成していたが、結果には結びつかなかった」は説得力のある言い訳と言えるでしょう。

しかし、皆さんの中には上司の指示などクソ喰らえだし、行動目標を満たす努力もまっぴらごめんだという方もいらっしゃるでしょう。そんなときに使えるキーワードが「グッド・リスク」です。チャレンジとはリスクを取ることです。つまり常に不確定要素と失敗の可能性を孕みます。リスクを認識しながらも十分なリターンを期待して行動することはビジネスシーンでは当たり前のように推奨されています。そして、リターンを期待せずに挑戦するアホはいませんから、とにかく何かやりさえすれば、それは常にグッド・リスクと呼べるのです。

ぜんぶ、トランプのせい

もう1つの有効なキーワードが「トランプのせい」です。これはあなたの失敗の理由を社会的問題にすり替えるテクニックで、オイルショック、バブル崩壊、リーマンショックと言葉を変えながら、いつの時代にも使われてきた伝統的な言い訳術です。一時期はあらゆる報告文書に「リーマンショックに端を発する金融危機~」といった文言が躍っていたものです。

ですが、社会のせいにするだけでは芸がありません。さらに一歩進んで、抜本的な改革が必要だと訴えることが重要です。「この状況を抜本的に解決するためにわが社は今すぐこれに取り組む必要があります」と口八丁で上司を丸め込み、年度の中頃から別のプロジェクトに取り掛かることで当初のノルマをウヤムヤにすることができます。

しかし、皆さんの中には、

「今度はその新しいプロジェクトのノルマを達成しなければならないのでは?」

と、不安に思う方もいるかもしれません。ご安心ください。口八丁で上司を丸め込み、よくわからない新プロジェクトを立ち上げられるあなたの力量があれば、きっと途中でヘッドハンティングされるはずです。責任を投げ捨て、直ちに他社へ脱出しましょう。これぞまさにピンチをチャンスに変える言い訳術です!

さあ、いかがでしたでしょうか? 様々なピンチが準備と機転、そしてダイバーシティにより解決できることがおわかりいただけたと思います。巧みな言い訳と屁理屈を武器に、多様化する現代ビジネスシーンをサバイブしていきましょう!