企業の景況感が悪化している。日銀の短観6月調査で、大企業・製造業の業況判断指数(DI)はプラス21。前回の3月調査より3ポイントマイナスで、5年半ぶりの2四半期連続のマイナスとなった。その背景には、トランプ政権の貿易政策の先行きへの不安があると、第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは指摘する。

「多くの企業にとって収益こそ過去最高水準でも、先行きとなると不安でしかたがないという状況です。トランプ政権による鉄鋼・アルミに対する追加関税に始まり、米中による関税合戦、さらには自動車関税の引き上げまで検討されている。このままでは実体経済に悪影響をおよぼすのではないかとの強い警戒感が景況感を押し下げているのです」

米国ではトランプ支持層は底堅く、秋の中間選挙後も保護主義的な貿易政策が続く恐れがある。世界経済の主役である米国だけに、その影響は計り知れない。注目すべきは今後の日銀の金融政策だ。

「業況判断DIが2期連続マイナスでも、マインド面の不安が先行しているだけと判断することもできますが、9月に控えた自民党総裁選を見据えて景気を良くしたいはずです。ここが黒田総裁のふんばりどころではないでしょうか」(熊野氏)

(図版作成=大橋昭一 写真=iStock.com)
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