これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、アサヒグループHDの小路明善代表取締役社長 兼 CEOのインタビューをお届けしよう――。

アサヒHD社長がのどから手が出るほど欲しい人材

アサヒビールやアサヒ飲料などを束ねる持ち株会社、アサヒグループホールディングスで社長兼CEOを務める小路明善氏。同氏は「(ビール業界で)トップメーカーの我々は、いわば“ファーストペンギン”であらねばならない」と言う。初めてのことにも果敢に挑戦し続ける企業風土を維持、強化するための人材はどうあるべきなのか。

――2016年から17年にかけ、欧州のビールメーカーの買収などで一気にグローバル化を進めました。そのようななか、どのような人材を求めておられますか。

アサヒグループHD代表取締役社長 兼 CEO 小路明善氏

単に海外比率が高くなったからグローバル化したということではなく、たとえば我々の主力商品である「スーパードライ」を、どう海外のお客様にお届けし、そのよさ、価値を認知していただくかが大事だと考えています。その実現のためにも、18年からアサヒグループのあるべき姿として「グローカルな価値創造企業」ということを打ち出しています。

グローバル化の進展もあって、たとえばAI(人工知能)などを含めたITの知識やスキルにも精通し、駆使していかねばなりません。ただし、より大事なのは、ITを使いこなしながら、考える時間をどう創出するかということです。とかく、ITを使いこなす時間に多くの時間が割かれ、結果的に見れば、企業の生産性はあまり高まらないという可能性もあります。ITで新しい知識を得たうえで、その知識で十分に考えて仕事を進めるのが大事です。ITを使うだけでは意味がないのです。

英会話にしても、ITと似たことが言えます。英語を話すことばかりに注意がいきがちですが、大事なのは、英語を話せるということ以上に、海外の異文化を理解する、あるいは許容できる人材になることです。

当社にも帰国子女の社員がいますが、彼ら彼女らは「異文化許容度」が非常に高い。相手がどういう商習慣や文化の中で育ち、どういう考え方からどういう結論を導き出しているかということを理解し、その結論について許容できるという度量の広さがあります。それを一言で言うと異文化許容度と捉えており、これがグローバル人材にとって必要な要素だと思っています。