政府が進めている「働き方改革」。重要なポイントは「同一労働同一賃金」だが、人事担当者にアンケートをとってみると、半数近くが「法制化に反対」と考えていることがわかった。「不平等」を是正するはずの同一労働同一賃金に、なぜ人事は反対するのか、人事コンサルタントの山口俊一氏が分析する――。

法制化には賛成と反対が拮抗!

政府が進めている「働き方改革」。このなかで重要なポイントになっているのが、「同一労働同一賃金」という考え方です。その原則は「同じ仕事には同じ賃金を支払う」というもの。この「同一労働同一賃金」に対して、総務・人事の担当者はどう考えているのでしょうか。

私が所長を務めている「新経営サービス 人事戦略研究所」では、人事情報サイト「日本の人事部」の利用者を対象に「同一労働同一賃金に関する企業の取り組み実態」について調査を行いました。

総務・人事部門を中心に248人から回答を得た結果、同一労働同一賃金の法制化については、賛成派(「賛成」13.9%+「どちらかといえば賛成」31.1%=45.0%)と反対派(「どちらかといえば反対」31.0%+「反対」11.5%=42.5%)がキレイに分かれるかたちとなりました。普段から、企業の人事制度について考えている人たちだけに、かなり具体的な理由も述べられています。

主な賛成理由を挙げると、

1.「賛成」「どちらかといえば賛成」の理由

・正社員、非正規社員といった雇用形態は、能力の差ではない。
・同一業務で、雇用形態による賃金格差が大きいと、やる気低下につながる。
・賃金は、仕事の能力や成果によって決まるべき。
・多様な働き方の観点からも、勤務時間の長短ではなく業務能力で決定すべき。
・正社員の中でも、同一業務で年功給が強ければ、若手の不満が大きくなる。
・定年後に同じ仕事をしていても、大幅に賃金ダウンすることは問題。
・正社員と非正規社員で、仕事の責任や転勤の有無が異なる部分の給与差は必要。

さて、いかがでしょうか。

賛成意見については、おおむね「本来、そうあるべきだから」といった、考え方による理由が多いように思われます。

同一労働同一賃金の趣旨を一言で表すと、「不平等のない、公正な報酬の実現」ということになるでしょう。