法的にデータは「所有」できない

最近は本や音楽、映画などのコンテンツを電子データで買う人が増えてきた。データはかさばらないため、持ち歩きや収納に便利だ。しかし、気になる点もある。電子書籍や音楽・動画の配信サービスが終了した場合、購入したコンテンツを引き続き楽しむことはできるのだろうか。

電子書籍や音楽・動画の配信サービスは、2つの種類に分けられる。毎月一定料金を払って読み放題、聞き放題、見放題になる定額制サービスと、コンテンツごとに課金するサービスだ。前者は端末にデータが残らないストリーミング形式、後者はデータを保存できるダウンロード形式で提供されることが多い。

この2つでは、利用者が料金を支払った対価として得るものが異なる。定額制サービスで利用者が購入するのは、コンテンツを提供する場の利用権だ。紙の本でいうなら、漫画喫茶に利用料金を支払っているのと同じ。シンプルでわかりやすい。

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電子書籍と本の法的位置づけ

一方、コンテンツごとに課金するサービスは少々ややこしい。紙やCDを買ったときと同じように所有権に料金を払っていると考えている利用者が少なくないが、それは誤解。知財に詳しい桑野雄一郎弁護士は次のように解説する。

「データに対して、法的な意味での所有権は発生しません。ダウンロードサービスで買っているのは、データをダウンロードする権利。法的には債権の一種であり、未来永劫保証されているものではありません。事業者が倒産すれば踏み倒されるおそれがあるし、そもそもサービスが終了すれば債務を履行しなくていいという規約になっているところが多い」