これまで、どんな劣悪な経営状態の企業も立て直してきた稲盛氏の経営テクニックは、一般の家庭にも有効だった! みるみる家計がよみがえる、簡単なステップを見ていこう。

家計の「見える化」で家族の意識を高める

社員にも経営者と同じスタンスで仕事に臨んでもらうのが、全員で稼ぐ「アメーバ経営」の肝。家計においても、家族全員に「自分が家計を担っている」という自覚を持ってもらうことが重要です。

稲盛氏は、社員の意識を高めるため、企業の経営状態や実績を社員にも「見える化」しました。そこで取り入れたのが、「時間当り採算表」です。実はこれは、家計簿とほとんど同じ構造です。経営の素人である社員にもわかりやすい形を追求した結果、見方も簡単な家計簿に行きついたのでしょう。

一般的に家計簿は「収入」「支出」「現金残高」の3つの項目に分かれていて、収入と支出の内訳を記入していきます。収入の欄には、夫の給与や妻のパート代が入り、支出の内訳として「食費」「医療費」「教育費」などを記入していくといった具合です。家計簿の「収入」にあたるのが、「時間当り採算表」の「総生産」、「支出」に当たるのが「経費」、「残高」に当たるのが「差引収益」。アメーバ経営では、差引収益を総時間で割ることで、当月時間当りの付加価値を算出し、採算の向上を目指すのです。

家計で1時間当たりの採算を算出する必要はありませんが、「家計の責任者である」という意識を持つためにも、家計簿や銀行の残高等を家族全員に公開してしまうのもひとつの手でしょう。資産が多い場合は、子どもに「いくらでも甘えられるな」と付け入る隙を見せることになるので問題ですが、家計が苦しい場合は、「赤字だよ」と現実を見せつける荒療治をしてもいいと思います。家計の現状を示して「だから、国立の大学以外の選択肢はないのだ。しっかり勉強して現役合格してもらわないとみんなが困る」と言われれば、子どもとて頑張らざるをえません。

私も相談者の子どもの前で、家計に今後訪れるであろう正念場について話すことがあります。教育費が月収に占める割合を知って、塾をサボらなくなる子どもがいたり、逆に「私立なんて望みすぎかもしれない」とプレッシャーを感じる子どもがいたり。反応はいろいろですが、家計の公開は確実に家族の当事者意識を高めます。

ファイナンシャル・プランナー 藤川 太
相談実績1万5000件超。「家計の見直し相談センター」相談員。
(大高志帆=編集・構成)
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